五月の中旬、今日から一学期の中間テストが始まる。
受験生である三年生は、テストと聞くだけでピリピリと空気が張り詰めたりするが、
初日の一時間目のテストは英語、涼香は手も足も出ないことは分かりきっている。
故の余裕、腕を組み目を閉じて用紙が配られるのをただ静かに待つ。
一応
ある日のテスト期間中、涼香の部屋にて。
「先輩、分からなくても解答欄は埋めてくださいね」
涼音がテキストを解きながら涼香に言う。
「それぐらい分かっているわよ、いつもやっているわ」
得意げに涼香が答えると、涼音が、本当に大丈夫かなこの人? という顔を向ける。
「解答欄を間違わないようにするって意味もありますからね」
涼香は髪を払う。その仕草はとても自信に満ち溢れていた。同じドジはしないわよ、と言っているようだ。
そしてテキストを開いて答えを写し始めるのだった。
そして、テストが始まる。
涼香はまず解答欄に目を通す。広い枠が多かった。
(記号問題が少ない⁉)
詰んだ……、早くも詰んだ。
(次の時間は国語ね)
名前を書きながら、次のテストのことを考える。できないものはいくら考えても無駄なのだ。
とりあえず解答欄は埋めておこうと、答えを記入していく。
十分後、解答用紙サッとを裏返してテスト終わりましたアピールをして、周りにプレッシャーをかける涼香の姿があった。
誰一人効いていなかったけど。