目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

中間テストにて 初日 英語 涼香サイド

 五月の中旬、今日から一学期の中間テストが始まる。


 受験生である三年生は、テストと聞くだけでピリピリと空気が張り詰めたりするが、涼香りょうかは別にそんなことなかった。


 初日の一時間目のテストは英語、涼香は手も足も出ないことは分かりきっている。


 故の余裕、腕を組み目を閉じて用紙が配られるのをただ静かに待つ。


 一応涼音すずねと勉強をしたが、涼音は二年生だ。テスト範囲が全く違うし勉強という面ではほとんど意味をなさない。教えてもらうことは叶わなくても、教えることはできるはず。そう思っていたが、成績の良くない涼香は一年前のテストのことなど覚えているはずもなく、よく聞く先生別の対策なども全くもって意味がわからない、覚えてないのだ。



 ある日のテスト期間中、涼香の部屋にて。


「先輩、分からなくても解答欄は埋めてくださいね」


 涼音がテキストを解きながら涼香に言う。


「それぐらい分かっているわよ、いつもやっているわ」


 得意げに涼香が答えると、涼音が、本当に大丈夫かなこの人? という顔を向ける。


「解答欄を間違わないようにするって意味もありますからね」


 涼香は髪を払う。その仕草はとても自信に満ち溢れていた。同じドジはしないわよ、と言っているようだ。


 そしてテキストを開いて答えを写し始めるのだった。



 そして、テストが始まる。


 涼香はまず解答欄に目を通す。広い枠が多かった。


(記号問題が少ない⁉)


 詰んだ……、早くも詰んだ。


(次の時間は国語ね)


 名前を書きながら、次のテストのことを考える。できないものはいくら考えても無駄なのだ。


 とりあえず解答欄は埋めておこうと、答えを記入していく。


 十分後、解答用紙サッとを裏返してテスト終わりましたアピールをして、周りにプレッシャーをかける涼香の姿があった。


 誰一人効いていなかったけど。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?