ある日の学校からの帰り道のこと。
「あ、そういえば先輩、傘はどうしたんですか?」
今日は朝から小雨が降ったり止んだりしていた日だった。登校時も傘をさしたりささなかったりで、傘を持ってきているという意識が割と薄めだった。
「あら? ……学校に置いたままね」
「それじゃあ取りに戻ります?」
「取りに戻るのも面倒だし、明日持って帰るわ」
そう言いながら涼香は空を見上げる。薄い雲が空に広がり、雨の降る気配はほとんどない。
程なくして駅に辿り着いた二人は、家方面の電車に乗って、しばらくの間揺られる。
「だんだん暑くなってきましたね」
「そうね、もっと暑くなる前に色々と出かけたいわね」
「じゃあ早起きしてくださいよ」
「前向きに検討するわ」
「それ絶対早起きしないやつ……」
そんな緩い会話をしながら、ふと電車の窓へ目を向ける。
「あ……雨」
涼音の呟きを聞いた涼香が同じ方を見る。
電車の窓に水滴が線を作っていた。
「濡れているだけよ」
小雨が降っている場所でもあったのだろうと楽観的な涼香。
そして最寄り駅に到着した。
「うーん、降ってますね!」
「よく分からない天気ね……」
すぐ止んでくれればいいのだが、いまいち天気が読めない。このぐらいの雨なら傘をささずに帰ってもそこまで濡れないから待たない方がいいか。
そんなことを考えていると。
「先輩、行きましょう」
傘を開いた涼音が涼香に手招きする。涼音の傘に入れば万事解決だ。
そして二人は肩を寄せ合い、帰路につくのだった。