ある休日。
(迷ったわ)
今日は
そして人が川のように流れて行くここは地下街。かなり大きな駅のため、地下でも地上からでも駅に行くことが出来る。
地下街などに縁のない場所に住んでいる涼香は、滅多に来ない地下街にテンションが上がってしまい、改札を出ると一目散に地下街へ向かったのだ。
そして今に至る。
近くに地上への出口があるためそこから出て、スマホのマップを使えば場所は分かるのだが、涼香はそうしたくなかった。
(ここで外に出ると負けな気がするわ)
上を見ると駅までの案内板が吊ってあるが、あれは当てにならない。涼香自身の力でこの迷宮を攻略しなければならないのだ。
(このお店……さっきも見たわね)
どの方向に歩いているのか分からなくなった涼香はそれでも歩き続ける。いつか出られると信じて。
(北の方はもっとややこしいらしいのよ。だからこんな所で迷っている暇なんてないわ!)
気合を入れた涼香はさらに歩き続ける。そして。
(駅に戻ってこられたわ! さすが私ね)
初めに来た場所と違う気もするが大きな駅だ、入り口なんていっぱいあるだろうし、駅の名前もひらがなで書かれているのは子供にも分かるようにしているからだろう。
フッと笑みを決めた涼香はとりあえず切符売り場へ向かう。涼音と来てみたい場所はもはや探していなかった。
(あら? 載ってある駅が違うわ……)
路線図を見てみると全く知らない駅の名前が載っていた。
(どういうことなの……⁉)
眉を顰めた涼香はスマホを取り出し、涼音にメッセージを送ろうとして――。
(……だめよ、今日は涼音に頼らないわ)
寸前で思いとどまる。
そしてもう一度、注意深く路線図を見ていくとあることに気づく。
(鉄道会社の名前が違うわ……やっぱり都会は人気なのね!)
雑に結論を出した涼香は、解けた謎に興味は無いといわんばかりに踵を返す。
その後、涼音から連絡が来るまで涼香は地下街を彷徨っていたのだった。