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放課後の公園にて

 ある日の放課後。


「うゔっ……食べ過ぎたわ……」

「ちょっと近くの公園で横になりましょうか」


 涼香りょうかは背筋を伸ばして斜め上一点を見つめている。涼音すずねはそんな涼香が転んでしまわないように支えながら、ゆっくりと歩いていた。


 とあるファミレスでスイーツフェスタが開催されており、それを見た涼香が涼音を誘ったのだ。そしてそのスイーツフェスタで涼香は食べ過ぎてしまい今に至る。


 ゆっくりと歩いて公園を目指す。ファミレスへ向かう道中にあった公園、こういう時に丁度よさそうだな、と涼音は思っていたのだ。


 程なくして公園に辿り着く。遊具は滑り台とジャングルジムのみ、後はベンチが二つある程度の小さな公園。


「はい、ゆっくり座ってくださいねー」


 ベンチに辿り着いた涼音は涼香を支えながらゆっくりと座らせる。まるでリハビリ風景のようだった。


 胃を圧迫しないように背筋を伸ばし続けている涼香は、ベンチに腰を掛けると、上を向いたまま隣に座る涼音の太ももをぺちぺち叩く。


「余計しんどくないですか?」

「大丈夫よ……お願い」


 涼香が大丈夫と言っているのなら大丈夫なのだろう。


「どーぞ」


 涼音がそう言うと、涼香はゆっくりと涼音の太ももに頭を乗せる。その時、ある一つの疑問が涼香の頭に浮かんだ。


「……どうして膝枕って言うのかしら?」

「あー……語呂がいいからじゃないですか?」


 なんとなく涼香の頭を撫でながら、涼音は思いつきで返す。


 姿を現し出した星々の光に目を細めながら涼香は呟く。


「たまにはいいわね、星を見ながら寝るのも」

「そうですね――って先輩寝るつもりですか⁉」


 日が沈んでも肌寒くは無い。このぐらいの気温なら涼しくて快適に眠れるだろう。


「少しだけ……許してちょうだい」


 既に涼香の目はとろんとしており、口もあまり回っていない。


「仕方ないですね、少しだけですよ。おやすみなさい」


 涼音の囁きが涼香に聞こえていたのかは分からない、心地よさそうに眠る涼香を見て破顔した涼音は、涼香の寝顔をカメラに収める。


「普段のお返しですよ」


 そして容赦なく、五分後に鳴るようアラームをセットするのだった。

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