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涼音の部屋にて

 ある日の夜、涼音すずねは自室で漫画を読んでいた。


 お嬢様学校に入学した主人公と上級生との物語。以前なんとなーくネットサーフィンをしていたら、たまたま見つけて、少し面白そうだと思ったので一巻だけ購入してみたのだ。


(お姉様……ねえ……)


 お嬢様学校では上級生のことをそう呼ぶのだろうか、ただの女子校では見られない光景が漫画の中で繰り広げられている。


(あたしも先輩のことお姉様って呼んでみようかな?)


 昔は名前で呼んで、中学を境に「先輩」呼びに変わって、次は「お姉様」と呼ぶ。涼香りょうかのことだから「姉より優れてる妹はいないのよ」と言いながら盛大なドジをやらかしそうだ。


 そんなことを考えて、自然と頬が緩んだ涼音は漫画に意識を戻す。


 漫画の中では、主人公が無邪気に、人目をはばからずに「お姉様、お姉様」とスキンシップをとる。かなりベタベタしに行っているが、お姉様の方も満更では無い。その光景を涼音は羨ましいと思いながら、更に読み進める。


 漫画は残り半分もない、それを左指に感じながら涼音は夢中になってページを捲るのだった。

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