五月の中旬、中間テスト初日。
やるだけのことはやった。あとは小さなミスをしないように、焦らないようにするだけ。大丈夫、ちゃんと勉強してきたのだから。
涼音は勉強ができるわけではないが、
一時間目は英語。文法も単語も覚えた、単語は多分忘れることは無いと思う。
ある日のテスト期間中、涼香の部屋にて。
「涼音〜、休憩しましょう?」
「先輩ずっと休憩してるじゃないですか」
涼香が単語をノートに写している涼音にだる絡みを始める、後ろから抱きついたり、ローテーブルと涼音の間に滑り込んだりとにかく邪魔で重たかった。
「先輩、マジで邪魔ですよ」
涼香にされるがままの涼音が手を止め、拘束から逃れようと身をよじるが。
「勉強をやりなさい」
「えぇ……」
休憩しようと言ったのは先輩では? という気持ちを込めた目を向ける涼音だったが。
「これには理由があるのよ」
なぜか涼香は胸を張って答える。
「どんな理由か言ってくださーい」
「話せば長くなるわよ?」
「じゃあいいです」
「そう、あれは五年前の話……」
「えぇ……」
「暗記をするなら特殊な状況下でやると効果的らしいわ」
とのことだったので、涼音が単語の暗記をしている最中は特殊な状況下――今回は涼香にだる絡みもみくちゃされながら暗記を行ったのだ。
最初は半信半疑で覚えられる自信はなかったが、今現在覚えているのだから効果があったとしか言いようがない。
そしてテストが始まる。
カッカッカッ、と文字を書く音が教室中に響く。
涼音は慌てず自分のペースで問題を解き始めるのだった。