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中間テストにて 初日 英語 涼音サイド

 五月の中旬、中間テスト初日。涼音すずねはテストが始まる直前まで、解いたテキストを見返していた。


 やるだけのことはやった。あとは小さなミスをしないように、焦らないようにするだけ。大丈夫、ちゃんと勉強してきたのだから。


 涼音は勉強ができるわけではないが、涼香りょうかよりかはできる。欠点(二十九点以下)は取らず、平均辺りを行ったり来たりするぐらいだ。


 一時間目は英語。文法も単語も覚えた、単語は多分忘れることは無いと思う。




 ある日のテスト期間中、涼香の部屋にて。


「涼音〜、休憩しましょう?」

「先輩ずっと休憩してるじゃないですか」


 涼香が単語をノートに写している涼音にだる絡みを始める、後ろから抱きついたり、ローテーブルと涼音の間に滑り込んだりとにかく邪魔で重たかった。


「先輩、マジで邪魔ですよ」


 涼香にされるがままの涼音が手を止め、拘束から逃れようと身をよじるが。


「勉強をやりなさい」

「えぇ……」


 休憩しようと言ったのは先輩では? という気持ちを込めた目を向ける涼音だったが。


「これには理由があるのよ」


 なぜか涼香は胸を張って答える。


「どんな理由か言ってくださーい」

「話せば長くなるわよ?」

「じゃあいいです」

「そう、あれは五年前の話……」

「えぇ……」

「暗記をするなら特殊な状況下でやると効果的らしいわ」




 とのことだったので、涼音が単語の暗記をしている最中は特殊な状況下――今回は涼香にだる絡みもみくちゃされながら暗記を行ったのだ。


 最初は半信半疑で覚えられる自信はなかったが、今現在覚えているのだから効果があったとしか言いようがない。


 そしてテストが始まる。


 カッカッカッ、と文字を書く音が教室中に響く。


 涼音は慌てず自分のペースで問題を解き始めるのだった。

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