ある土曜日のこと。
そしていつも通り、朝食兼昼食のケーキをローテーブルに広げていた、若さの暴力である。
ケーキを用意し終え、座っている涼音の反対側に涼香がベッドから転がり落ちて座る。向かい合って座るのもいつも通り、ただ今日違ったのは――。
「ちょっと先輩、足が邪魔です」
涼香が涼音の足を引っ張ってくることだった。
「なにを言っているのよ、ここは私の部屋よ」
「だからって足引っ張らないでくださいよ!」
タコのように絡ませて引っ張ってくる涼香の足を振り解こうとするが、座っている体勢だと上手く解けない。
「涼音の足、すべすべで温かいわ」
「ズボン越しですけど⁉ まだ寝ぼけてます?」
「起きているわよ」
なにを言っているのこの子は……、的な目を向けてくるので涼音は困惑した。
「えぇ……」
涼香とはかなり長い付き合いにもかかわらず、よく分からない時がある。涼香のよく分からない一面を見る度に涼音はなんだか複雑な気分になる。
涼音の心境など関係無しに、涼香は呑気に水を飲んでいる。そしてむせた。
一人もやもやしていても仕方がない、涼香のことだし、多分なにも考えていないのだろう。
「なんで訳の分からないこと言ったんですか?」
「なんとなくよ」
「……」
複雑な気分になる必要なんてなかった、なにも考えてなかったのだ、だから分からなくても仕方がない。