ある日の休み時間。
次の授業が移動教室のため、渡り廊下を歩いていた
「あれ、先輩じゃないですか」
「ふふっ」
髪を払って涼音の横を通り過ぎた涼香。
「えぇ……」
素通りされてしまった。周りに他の生徒はいないから気をつかわなくて大丈夫なのに素通りされてしまった。
クラスメイトはその涼香の首根っこを掴んで強制的に回れ右をさせる。
「涼音ちゃん、涼香のことお願い」
「え、あ、はい」
そしてクラスメイトはその場を後にする。
任されてしまった。嫌では無いけど、むしろウェルカムだけど任されてしまった。
この場には涼音と涼香二人のみ、たまに他の生徒が通るが騒ぎにならないから別にいい。
「さっきの一体なんなんですか?」
「かっこよかったでしょう?」
「いやあ……」
涼香が髪を払った瞬間僅かに歓声が上がっていたのだ。涼音を含む、普段の涼香の姿を知っている者の認識とそうでない者との認識はかなり異なる。
「先輩移動教室だったんですか?」
「私は先生の手伝いよ」
「信頼されているんですね」
養護教諭と体育教師は涼音達とほとんど変わらない認識だが、他の教師陣からの認識は異なる。ちなみに養護教諭と体育教師の間に謎の友情が芽生えている。
「ふふっ、そうなのよ」
得意げに微笑む涼香をなんとも言えない表情で見る涼音だった。