ある日の休み時間、
「今日の涼香は静かね」
涼香のクラスにやってきた
涼香はチラリと横目で菜々美を確認した後、本に目を戻したかと思うとゆっくりと本を閉じる。
「あ、これ独り言だから反応しないで、喋らないで」
「この前の
菜々美の声は届かなかったらしく、涼香はいつも通り喋り始める。休み時間の涼香は読書をしているか涼音のことを話すかのどちらかだ。ちなみに読書をしている割合はかなり低い。
「そうね、涼音ちゃんは可愛いわね。それは本気でそう思う」
「でしょう? ほら見なさいこの涼音の写真を」
涼香のスマホには、口の端に着いた生クリームなんて気にせず、笑顔でクレープにかぶりつく涼音の写真があった。
「可愛いけど……勝手に見せたら怒られるわよ」
涼香のスマホに手を伸ばした菜々美は、スマホのサイドボタンを押す。
「涼音が可愛すぎるのがいけないのよ」
暗転したスマホをポケットにしまった涼香はどこか儚げで、誇らしげに語る。
「いや、涼音ちゃんのせいにしないであげて」
生暖かい空気が教室を満たすのだった。