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中間テストにて 二日目 地理 涼香サイド

 中間テスト二日目、一時間目は地理。


 涼香りょうかは今日も自信満々で席に着いていた。


 地理もそこそこ得意な部類に入りそして、国語と違って記憶が飛ぶ心配もない。


 高校では、二年から地理と歴史を選択できるようになっている。数字が苦手な涼香にとって、年号が出てくる歴史を選択するなんて選択肢は初めから無かった。消去法である。


(選択授業のテストなんてほとんどが穴抜き記号問題よ、欠点なんてありえないわ)


 涼香は内心ほくそ笑む。




 テスト初日の放課後、涼音すずねの部屋で次の日のテスト勉強をしていた二人。


「涼音、あなたに地理のテストというものを教えてあげるわ!」


 バンっと注目を集めた涼香が得意げに言う。涼音も一応聞く体勢をとるが、言いたいことは知っている。


「記号問題ばかりだから簡単なんですよね」


 涼香は目を見開き、どこからか用意してきた冷や汗を垂らす。


「あなた……天才ね……⁉」

「先輩が去年めちゃくちゃドヤってきたんで覚えてますよ」

「そ、それならこれはどうかしら……。テスト前に貰えるプリントとほぼ内容が同じテストというのは……⁉」

「わー、それはいいこと聞きましたねーありがとうございまーす」

「涼音が冷たいわ……」

「だって去年めちゃくちゃ聞きましたもん……」


 成績は下から数えた方が早い涼香にとって、地理のテストでの高得点は、欠点さえ取らなければそれでいいと思っていてもなんやかんやで嬉しかったのだ。


 高校での初めての高得点、テスト返却のあった日は涼音のベッドに思い切りダイブしてしまうほど喜んでいた。


「あと、あたしは冷たくないですよー」


 そう言って涼音は手を伸びして涼香の頬を挟む。


「……そういう意味ではないと思うわよ」


 涼香は冷静にツッコむ。すると瞬く間に涼音の顔が赤く染まっていく。


「あら本当に温いわね」


 その頬を涼香はむにゅむにゅするのだった。




 昨日の涼音も可愛かったなと、なぜかそっち方向に飛んでいった記憶を思い出しながら涼香はテスト用紙を後ろに回していく。


 そして二日目のテストが始まる。

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