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中間テストにて 二日目 地理 涼音サイド

 中間テスト二日目、涼音すずねは黙々とテストに勤しんでいた。


 教科は地理、二年になった時、地理か歴史どちらを受けるかの選択で涼音は地理を選んだ。理由は単純、涼香りょうかが地理を選択していたからだ。


(あっ、ここ直前に貰ったプリントでやったところだ!)


 涼香から事前に(去年から)聞いていた通り、問題はほとんどが穴埋め、四角の中から単語、記号を選べる問題。そしてなにより、テスト前に貰ったプリントとほとんど内容が同じだった。




 高校一年、一学期中間テスト後。テスト返却日の放課後の涼音の部屋にて。


 ぼすんっ、と涼音の部屋に来た涼香が、ベッドにダイブする。


「えぇ……」


 なにが起きたのか、涼音には分からなかった。


 涼音の困惑をよそに、涼香はベッドに沈んだまま。もしかして眠ってしまったのだろうか? 涼音は試しに涼香の脇腹を突っつく。


「ふぐぅっ」


 身をよじった涼香は慌てて脇腹を腕でガードする。


「急にどうしたんですか?」

「脇腹は弱いのよ」

「それは知ってますけどそうじゃなくて、なんで突然ベッドにダイブしたんですか?」


 涼音がそう問いかけると、涼香は不敵な笑みを浮かべる。そして鞄の中を漁ること五分。


「学校に忘れてきたわ……」


 世界の破滅する様をなにもできずに、ただ呆然と見ることしかできない無力な人間のような表情を浮かべる涼香。


「なにをですか?」

「テストよ……!」

「へぇー」


 鞄を机の上に置きながら、涼音はどうでも良さそうに答える。


「ねえ聞いて、今回は凄いのよ。地理のテストなんだけどね、八十六点を取れたのよ!」


 涼音の興味を引こうと、必死に捲したてる涼香の言葉に――。


「えっ……⁉」


 ――涼音は驚きが隠せなかった。


 停止する思考を涼音は必死に回す。


(先輩が八十六点をテストで取った⁉ 絶対なにかの間違い、間違いじゃなかったらここにいる先輩はいったい……⁉)


 最悪の想像をした涼音は身を守るため、スマホを握りしめて慌てて部屋から飛び出す。なんとも失礼な後輩である。


「お祝いはいらないわよー!」


 涼香の呑気な言葉がドア越しに響いた。




 懐かしい、あの後危うく警察に電話をするところだった。


 それはさておき、涼香の言った通り、地理のテストは簡単すぎた。これなら涼香でも高得点を取ることができる。


 今頃涼香も余裕をかましていることだろう。


 その後のテスト返しで、地理の得点が九十点を超えた涼音だった。

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