ある日の休み時間。
「せーんぱい」
「あら、いらっしゃい」
机に突っ伏していた
「なにかあったの?」
涼音の方から涼香を訪ねてくるなんて珍しい。
「いえ、なんとなく来ただけです」
教室へ入った涼音が涼香の席へと近づく。
涼香のクラスメイト達が快く迎え入れてくれた。
「用がなくても涼音が来るなんて……⁉」
息を呑む涼香に、涼音がしおらしく答える。
「……会いに来ちゃダメですか?」
その瞬間、立ち上がった涼香が教室を見渡す。
「目に焼き付けなさい! 涼音の可愛さを‼」
カメラのシャッターを切りながら息巻く涼香に生暖かい目を向けるが、涼香の言う通り、涼音の可愛さを目に焼き付けることを忘れないクラスメイト達。
「なんで今日の涼音ちゃんはしおらしいの?」
とあるクラスメイトが涼香に問いかける。涼香は涼音をよしよし撫でながら答える。
「これは梅雨のジメジメでふやけてしまってるのよ、毎年梅雨の時期はこうなってしまうわ」
「そんな設定が――⁉」
そんな設定ある訳無い。涼音は、なに言ってんだろう、と思いながら、涼香にされるがままでいる。
「でもあなた達に涼音はあげないわよ」
「せんぱいの手、あったかいです」
涼音が涼香の手を頬に当てて微笑む。
「あげないわよ‼」
クワッと周りを威嚇する涼香であった。