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休み時間の三年生の教室にて 2

 ある日の休み時間。


「せーんぱい」


 涼音すずねが三年生の教室へ顔を出す。


「あら、いらっしゃい」


 机に突っ伏していた涼香りょうかがそれに気づく。


「なにかあったの?」


 涼音の方から涼香を訪ねてくるなんて珍しい。


「いえ、なんとなく来ただけです」


 教室へ入った涼音が涼香の席へと近づく。


 涼香のクラスメイト達が快く迎え入れてくれた。


「用がなくても涼音が来るなんて……⁉」


 息を呑む涼香に、涼音がしおらしく答える。


「……会いに来ちゃダメですか?」


 その瞬間、立ち上がった涼香が教室を見渡す。


「目に焼き付けなさい! 涼音の可愛さを‼」


 カメラのシャッターを切りながら息巻く涼香に生暖かい目を向けるが、涼香の言う通り、涼音の可愛さを目に焼き付けることを忘れないクラスメイト達。


「なんで今日の涼音ちゃんはしおらしいの?」


 とあるクラスメイトが涼香に問いかける。涼香は涼音をよしよし撫でながら答える。


「これは梅雨のジメジメでふやけてしまってるのよ、毎年梅雨の時期はこうなってしまうわ」

「そんな設定が――⁉」


 そんな設定ある訳無い。涼音は、なに言ってんだろう、と思いながら、涼香にされるがままでいる。


「でもあなた達に涼音はあげないわよ」

「せんぱいの手、あったかいです」


 涼音が涼香の手を頬に当てて微笑む。


「あげないわよ‼」


 クワッと周りを威嚇する涼香であった。

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