ある日の放課後。
「
「なんですか?」
「呼んでみただけよ」
「そうですか」
八回目。五分おきにこのやり取りを繰り返していた。
「涼音」
「なんですか?」
「呼んでみただけよ」
「……」
「涼音」
「……なんですか?」
「呼んでみただけよ」
「あたし帰っていいですか?」
「どうしてそんな酷いことを言えるのかしら」
涼香が肩をすくめる。
時間は十六時を過ぎている、部活動のない生徒達は既に帰っている時間だ。
「放課後の学校って雰囲気がいいわよね」
「え、急になに言ってるんですか?」
そう思っているのは、この場では涼香だけのようだが、涼音も涼音である。なんやかんや言って涼香に付き合っている。
「ここねに会いに行きましょう」
「迷惑ですって」
涼香のクラスメイト
「そうかしら? 今日はここね以外の部員はいない日らしいわよ。まあ、
隣のクラスの
「なおさら迷惑じゃないですか」
「だってお菓子食べたいもん……」
「食べたいもん……じゃないですよ」
頬を膨らます涼香に呆れた目を向ける涼音。
「あたしの作ったお菓子より芹澤先輩の作ったお菓子がいいんですか?」
「だって今食べたいのよ。涼音に作れる? 材料もないのに」
「そこまで言うなら家庭科部にお邪魔しますか? 材料費払えば作らせてくれますよね?」
涼香の挑発に乗ってしまった涼音であった。
「話は通しているわ、行こうではないの」
実は元々ここねには伝えていたのだ、今までその時間稼ぎをしていた涼香である。
計画通り。涼香は口角が上がりそうになるのをなんとか堪える。
「なんでにやけているんですか」
堪えられてなかった。
髪を払った涼香が荷物を持って教室を出る。そしてその後を追う涼音、二人は家庭科室に向かうのだった。