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保健室にて 2

「あのね、水原みずはらさん。本当は家でした怪我の処置は学校ではしないものなのよ」

「「そうなんですか?」」


 ある日の始業前、涼香りょうか涼音すずねは保健室に来ていた。


「絆創膏変えるとか、新しい湿布が欲しいとかだったらまあいいんだけどね」

「先生、通学中に湿布が剥がれました」

「いやぶつけたの靴下の下ですよね」


 それなら剥がれないですよ。と涼音が涼香の靴下を下げる。真っ白でほっそりとした涼香の脛が僅かに青紫に変色している。


「でも処置しないわけにはいかないから処置はするけど」


 養護教諭は渋々と湿布を取り出す。そして半分に切った湿布を涼香の脛に貼ると、テープで剥がれないように止めた。


「……いつもありがとうございます」


 申し訳なさそうに涼音が言うと、養護教諭が力なく首を振る。


「ううん、いいのよ。水原さんが二年生になってから、多分檜山ひやまさんが入学してきてからだと思う。水原さんが保健室へやって来る回数自体は減ったのよ」

「なんか、本当にありがとうございます」


 頭を下げたついでに涼香の靴下を上げる。


「これからもよろしくお願いしますね、先生」

「あ、うん。できればよろしくしたくないけど。そろそろ教室に戻りなさい」


 頷いた二人は保健室から出ていく。


 生徒がいなくなった保健室で、養護教諭がため息と共に呟く。


「なんで誰も信じてくれないんだろ……」

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