「あのね、
「「そうなんですか?」」
ある日の始業前、
「絆創膏変えるとか、新しい湿布が欲しいとかだったらまあいいんだけどね」
「先生、通学中に湿布が剥がれました」
「いやぶつけたの靴下の下ですよね」
それなら剥がれないですよ。と涼音が涼香の靴下を下げる。真っ白でほっそりとした涼香の脛が僅かに青紫に変色している。
「でも処置しないわけにはいかないから処置はするけど」
養護教諭は渋々と湿布を取り出す。そして半分に切った湿布を涼香の脛に貼ると、テープで剥がれないように止めた。
「……いつもありがとうございます」
申し訳なさそうに涼音が言うと、養護教諭が力なく首を振る。
「ううん、いいのよ。水原さんが二年生になってから、多分
「なんか、本当にありがとうございます」
頭を下げたついでに涼香の靴下を上げる。
「これからもよろしくお願いしますね、先生」
「あ、うん。できればよろしくしたくないけど。そろそろ教室に戻りなさい」
頷いた二人は保健室から出ていく。
生徒がいなくなった保健室で、養護教諭がため息と共に呟く。
「なんで誰も信じてくれないんだろ……」