ある日の放課後、
「ねえ涼音、某コーヒー店に行きましょう」
「……なんで某コーヒー店なんですか?」
「伝わるでしょう?」
「それはもうバッチリと」
「ふふっ、さすが私検定準一級の涼音ね、それでは向かいましょうか」
そして二人はショッピングモールの一階のにあるレストラン街へと向かう。
某コーヒー店とは言ったが、このショッピングモールには『コーヒー』と名のつく店や、『カフェ』と名のつく店が複数あった。まあ『コーヒー店』と言ったため、カフェは除外していいだろうが。
しかし困ったことに、『コーヒー』と名のつく店は二軒並んでいたのだった。
星を冠するコーヒー店と、米を冠するコーヒー店だ。
涼音な星を冠するコーヒー店を覗いて言う。学校終わりの高校生が列をなしている。
「結構人が並んでますね」
涼香は米を冠するコーヒー店を覗いて言う。ちらほらと席が空いている。
「すんなりと入れそうね」
「「え?」」
二人は顔を見合わせると同時に首を捻る。
全然伝わってなかった。
「先輩の方に行きましょう。並ぶの嫌です」
判断が早い涼音が涼香を引っ張り、米を冠するコーヒー店の入口へと向かう。
「初めて入るわね」
「えぇ……」
こうしていつも通りの緩慢な放課後が過ぎていく。