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7月

通学路にて

 梅雨が明けたのか分からないある日の通学中のこと。


 曇り空の下で、じめつく暑さに身を茹でられながら涼香りょうか涼音すずねは歩いていた。


「もうちょっと……暑くなるの待てませんかね……!」


 学校の最寄り駅から学校へと向かう途中、時間は八時頃。家を出た時間はまだそこまで気にならない暑さだったのだ。


「早く登校するべきかしら」

「先輩早起きできないじゃないですか」

「その通りね」


 そんなだらだらとした会話を続けながら学校への道のりを行く。いつも通り周りの生徒達からの視線が刺さるが、今はそんなことどうでもよく、この蒸し暑さから解放されたかった。


「暑いわね、教室はクーラー効いているかしら」

「早く行き過ぎると効いてないですもんね」

「ということはギリギリに学校に行くしかないわね」

「電車の時間もありますし絶対先輩が遅刻するんで無理です」


 ちなみに今日も涼香のドジのせいで一本電車を遅らせていた。


菜々美ななみが免許証を取ったら送ってもらうしかないわね」

「いや学校は車で通学できないですよ」


 涼香がハンカチで汗を拭きながら隣を歩く涼音に目を向ける。


「髪を切れば涼しくなるかしら」

「短くするんですか」


 涼香がその綺麗な黒髪を切るのなら、涼音も髪の毛を短くしようかと思っている。


「今年の夏次第ね」

「そうですか」


 そう思っていても、言うつもりが無い涼音はどうでもいいような態度をとるのだった。

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