ある日のこと。保健室にやってきていた
保健室に置いてある身長計を見た涼音がなんとなく思ったことを口にした。
「そういえば先輩って身長何センチなんですか?」
「百七十センチね!」
自信満々に答える涼香。
「え、本当ですか?」
なんとなく涼音は涼香の言っていることを信じられなかった。
「本当よ」
当たり前ではないの、と自信に満ち溢れた涼香が髪の毛を払う。
「確認しましょうよ」
「私の言ってることが信じられないのかしら?」
涼香のリアクションを見るに、恐らく鯖を読んでいるのだろう。
「いや、まあ……はい」
なので涼音は正直に頷くことにした。
「涼音が意地悪言うせいで測る気が無くなったわ」
なぜか涼音が悪い的な雰囲気を出した涼香が保健室から出ていこうとするが、涼香の腕を掴んで阻止する。
「先輩が鯖読んでても気にしませんって」
「鯖の味噌煮が食べたいわ」
「なら身長を測ってください」
「……しょうがないわね」
思いのほかあっさりと頷いてくれた。長期戦になることを覚悟していた涼音だったが拍子抜けしてしまう。
涼香を身長計に立たせて身長を測る。
「百六十九センチですね」
「百七十よ」
「いや、百六十九ですって」
「百七十よ!」
「百六十「百七十‼」
「えぇ……」
百七十センチに対する並々ならぬ執念に恐れ戦いた涼音は、涼香の身長は百七十センチ、と思うことにした。