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通学路にて 4

 ある日のこと。


「先輩! 急いでください!」


 朝の通学路を走っていた涼音すずねが、後ろでヘロヘロになっている涼香りょうかに声をかける。


「待って……あっつい……暑いわ……!」


 朝とはいえ今は七月、ものすごく暑い。


「電車に遅れますよー!」

「いいではないの……次の電車で間に合うのだから」

「普通に間に合うかギリギリ間に合うかだったら、普通に間に合った方がいいって言ったの先輩ですよ」


 蝉のシャワシャワ鳴く音が間を取る。


「知らないわ!」


 蝉の鳴く音を打ち消す程の勢いで声を張り上げた涼香。


「えぇ……」

「こんなに暑いのに、走ったらびっちょびちょになってしまうわ。だからゆっくり行きましょう?」


 涼香はリュックから取り出したタオルで汗を拭いてる。


 涼音も走っている最中は汗をかかなかったのたが、足を止めた瞬間に汗が吹き出る。


「もう手遅れのような気がしますけどね……」

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