ある日のこと。
次の授業のための移動中、
「
「知ってるわよそれぐらい」
腕を掴まれた菜々美は、なに当たり前のことをいっているの? という風に首をかしげる。
そう、涼音は可愛いのだ。それはここねが大好きな菜々美も思っている。
しかし、いくら涼音が可愛くても、いくら涼音が可愛いと認めても、菜々美が一番可愛いと思っているのはここねだ。
「でも菜々美はここねここねと言うではないの。なぜかしら? 理由を言いなさい」
菜々美は何度も、涼音は可愛いけど自分が一番可愛いと思っているのはここねだ、と涼香に言っているのだが。なぜ今日の涼香はそう詰めてくるのか分からない。
だから菜々美は答える。
「それは私がここねのことが……す、すすす……、ここねが一番可愛いし……?」
答えられなかった。
「なにを言っているのかしら。理由になっていないわね」
「………………」
ちょっぴり泣いてしまいそうな菜々美であった。