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休み時間にて 8

 ある日のこと。


 次の授業のための移動中、涼香りょうかはたまたますれ違った菜々美ななみを捕まえて言った。


涼音すずねは可愛いのよ」

「知ってるわよそれぐらい」


 腕を掴まれた菜々美は、なに当たり前のことをいっているの? という風に首をかしげる。


 そう、涼音は可愛いのだ。それはここねが大好きな菜々美も思っている。


 しかし、いくら涼音が可愛くても、いくら涼音が可愛いと認めても、菜々美が一番可愛いと思っているのはここねだ。


「でも菜々美はここねここねと言うではないの。なぜかしら? 理由を言いなさい」


 菜々美は何度も、涼音は可愛いけど自分が一番可愛いと思っているのはここねだ、と涼香に言っているのだが。なぜ今日の涼香はそう詰めてくるのか分からない。


 だから菜々美は答える。


「それは私がここねのことが……す、すすす……、ここねが一番可愛いし……?」


 答えられなかった。


「なにを言っているのかしら。理由になっていないわね」

「………………」


 ちょっぴり泣いてしまいそうな菜々美であった。

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