ある日のこと。
「バニラかチョコ、どっちがいい?」
「どっちも食べます」
「暑さで脳が溶けてしまったのかしら? それでは私の分が無くなるではないの」
「え……⁉ 先輩も食べるんですか?」
恐ろしいものを見たような表情をする涼音。
涼香はアイスが溶けてしまわないよう冷凍庫にアイスを戻すと。涼音の両肩に手を置き、目を真正面から見据える。
「食べるに決まっているでしょう?」
優しく、されど力強く。まるで幼い子供に言い聞かせるような声音だった。
「ちなみに私はチョコを食べたいわ」
そう言うと涼香は冷凍庫からチョコアイスを取り出した。
涼音は涼香越しに冷凍庫の中を覗き込む。箱に入ったバニラアイスとチョコアイスがあった。
「あたしもチョコアイスがいいです」
「同じ味だとバニラアイスが食べられないではないの⁉」
恐ろしいものを見たような表情をする涼香。
「いや、結構アイス残ってましたよね? さっきからなに言ってるんですか? 暑さで脳が溶けちゃいました?」
恐ろしいものを見たような表情を返す涼音。
なんとも言えない空気が漂うのだった。