そろそろ涼香りょうかが帰ってくる頃だろう。なんとなくそう思った涼音すずねは、リビングから玄関へとやってきた。
するとタイミング良く、鍵の開く音がして涼香が帰ってきた。
ふと思ったが、なぜ自分は水原みずはら家の鍵を持っていないのだろう。涼香は檜山ひやま家の鍵を持っているのに。
「帰ったわ!」
帰ってきた涼香は汗でブラウスが張り付いており、髪の毛も顔に張り付いていた。とにかく暑そうだった。
「お帰りなさい。ごは――お風呂行きましょう」
「一緒に入る?」
「嫌です」
手を広げる涼香にしかめっ面を返した涼音は、大人しく涼しいリビングへと引っ込むのだった。