目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

シルキー


なんか適当に魔物合成させまくっていたら、魔王を生み出してしまった。


魔王、それはこの世界における恐怖の象徴。


とは言えど、所詮は人類の尺度での話であって、この世界の共通の敵と言う訳では無い。


スーちゃんは過去の記憶を引き継ぎ、魔王ではなく“スーちゃん”として生まれ変わったのだ。


魔王は生まれながらにしてなるものではなく、その行いによって魔王と定義されるのである。


勇者だって罪のない人を殺したら、ただの人殺しと同じように。


さて、そんなスーちゃんが魔王になってしまった訳だが、この村は既にスーちゃんが大きくなる事に関して特に疑問を抱かない。


ある意味寛容な村である。これが教会の権威が強い街なんかだったら、間違いなくスーちゃんは討伐対象となっていただろう。


まぁ、寛容と言うか、俺達を空気として扱っているだけなんだけとね。


シルはそれなりに村に溶け込んでいるが、俺とスーちゃんは居ないものとして扱われることが多いのだ。


人間と、話すの、難しい。


そして、スーちゃんはなんと分身体を生み出せるようになっていた。


スーちゃんから分裂した、ミニスーちゃんと言うべきか。


性能は本来のスーちゃんよりも劣るものの、そこら辺のスライムよりは圧倒的に強い。


しかも、バグレベルで強い。試しにゴブリンと戦ってもらったが、スライムパンチでぶっ飛ばしていた。


スーちゃん、ゴリゴリの武闘派なのは小さくなっても変わらないのね........


そんな古の魔王を誕生させてしまい、あれこれ、俺が魔王として討伐される可能性があるんじゃね?


と、若干不安になりつつも翌日。


俺達は集まったスライム達をポヨポヨしていた。


とりあえずスーちゃんはこれ以上強くなれないらしい。


種としての限界点。それがこのコスモスネビュラスライムなのだ。


となると、次はシルやデスサイズの強化をした方がいい。


冒険者になる為にも、仲間たちの強化は必須であった。


「久々に一緒に寝たね」

「うむ。我が大きくなってからは、一緒に寝る機会がなかったからな。代わりに仲間にしたスライム達を抱き抱えて寝ておったな」

「昔を思い出すよ。あのころは本当に精神的に参ってた。話せないスライムにずっと1人で話しかけてたからね」

「ハッハッハ。スライムは言葉こそ分からんが、雰囲気で何が言いたいのかはなんとなく感じられる。我の場合はジニスに話しかけられすぎて、人の言葉すら覚えたしな」

「そうだね。途中から明らかに俺の言葉を理解していたし」


わずか三年足らずで新たな言語を習得できるって、スライム賢すぎないか?


俺のイメージだとスライムもアホの子みたいなところがあるが、この世界のスライムは全体的に知能指数が高いのかもしれん。


ゴブリンも思ってたよりは賢いんだよなぁ。


「して、今日は何をするのだ?このまま遊ぶか?」

「それもいいけど、冒険者になることに向けて、シルとデスサイズの強化をしないとね」

「私ですか?」


シルは現在、ミニシルキーと呼ばれる魔物になっている。


チマチマ強化して強く放っているのだが、まだ完全に姿が変わるほどにはなっていなかった。


とりあえず、もう少し大きくなってもらって、大人とは言わずとも少女ぐらいにはなってもらわないと。


一応、冒険者になれる基準が10歳以上なので、そのぐらいの見た目にはなって欲しい。


そもそも魔物であるシルが冒険者になれるのかという問題があるが、姿が変われば多少は誤魔化せるだろう。どうせこの村の冒険者ギルドは、ロクな仕事をしていない。


平和な村だからね。


冒険者の仕事はこれと言ってないのだ。


冒険者の仕事として受けるよりも、自分でやった方が早いことも多いし。


「シルには大きくなってもらおうと思って。折角スーちゃんが大きくなっ他お陰で、スライム達が無条件で仲間になるようになったんだから、これを有効的に活用しない手はないよ。もちろん、嫌なら断っていいけど」

「いえ、そのようなことはしませんよ。ピクシーの頃よりも圧倒的に強くなった。魔物にとって、強さとは正義ですから」


魔物の世界では強さが全て。


俺のスキルである魔物合成は、簡単にその強さを引き上げることが出来る。


魔物からすれば、是非とも欲しいスキルらしい。


スーちゃんと出会い、かれこれ4年。未だに魔物の価値観には少し慣れない部分もあった。


「じゃ、早速やろうか。小さくて可愛いシルを撫でるのも良かったけど、大きくなってもシルはシルだからね」

「ふふっ、大きくなったら私がジニス様を撫でて差し上げましょう」

「........それはそれでちょっと複雑だな」


俺、同年代の子達と比べて身長が低いんだよな。それが悩みの種である。


俺も合成したら身長伸びたりしない?え?そもそも人間は合成対象外?そうですか(涙目)。


俺自身も強化出来たら最高だったのにとは思いつつも、俺は集まってくれたスライム達と契約し、合成してくれる子を募る。


すると、全員が合成するよ!!と立候補してくれた。


俺としては助かるが、本当に魔物って強くなることに貪欲である。たとえ自分の姿を失ってしまったとしても、そこまでして強くないたいもんなのかね?


やはり、作に囲まれた世界で生きていた人間とは合わない部分は多いよな。


「とりあえずこの子達を合成して、グランド........は無理だから、ビックスライム辺りを作ろうか」

「ふむ。そのへんが無難だな」


という訳で早速合成。


ちなむに、ビックスライムはグランドスライムの2つ前の魔物である。


コスモスネビュラ、グランド、デラ、ビック、トリプル、ダブル、普通のスライム、子供スライムの順だ。


通常スライムだけで8種類もあるのか........もしかして、シルも八段階進化とかしちゃうのかな?


ちなみに、スライムは確認されている中で1番種類が多い魔物でもある。


通常スライム(青透明)の他にも、ポイズンスライムや、レッドスライム、グリーンスライムと言った様々な環境に適応したスライムが生息しているそうだ。


そして、それらの頂点に立つのがコスモスネビュラ。


スーちゃんは真のスライムの王様なのだ。


その王様、シルがどんな変化を遂げるのか楽しみでポヨンポヨンしてるけど。


スーちゃんは大きくなってもスーちゃん。感情が震えに出てるね。


「よし、できた。ビックスライム君、合成していいかい?」

(ボヨン)


ビックスライムを完成させ、ゴブリンと少し戦ってもらって経験を稼いでもらった後、最後の確認に入る。


ビックスライム君は、快く縦に揺れるとボヨンボヨンと揺れながらシルの横に向かった。


「どちらに寄るんでしょうか?」

「どちらにせよ、もっと可愛くなると思うよ?」

「本当?!だったら嬉しいな!!」


シルも女の子だ。自分が可愛くなってくれた方が嬉しいに決まっている。


そして、素が出ている。普段は真面目なメイドさんを演じていても、隠しきれないワクワクがそこにはあった。


「じゃ、行くよ。合成!!」


ビックスライムとシルが合成され、新たな魔物が姿を表す。


俺とスーちゃん、そしてデスサイズは、その様子を固唾を飲んで見守っていた。


光が溢れ、目を瞑る。そして、そこから現れたのは、1人の少女であった。


「お初にお目にかかります。ジニス様。家事精霊シルキーこと、シル。改めてご挨拶を」

「大きくなったね」

「うむ。大きくなったな」


ビックスライムと合成したものの、その姿は人間そのもの。


そして、シルはミニシルキーからシルキーに進化し、15歳程度の少女になっていたのであった。


俺、身長抜かれたんだけど........ちょっと悲しい。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?