あの転生の日から、早いもので17年の月日が経った。その中で色々と分かった事がある。
まず、ここが地球ではない事。
簡潔に言えば、魔法と剣が支配する異世界。
空には大小2つの太陽と外輪を持つ青い月が輝き、鮮やかな鳥が群れを成して海を渡り、地には巨大な蟻が巣を掘り、美しい漆黒の毛並みを持つウサギが野を駆ける。
私が今いるヴィスハイム王国は、水の都と呼ばれるほど豊潤な土地だ。王都ノイゼルの至る所に水路が伸び、ゴンドラが行きかっていて、どこかヴェネツィアを彷彿とさせる。煉瓦で作られた家並みは、夕日を浴びて黄金に輝き、透明度の高い湖と相まって観光名所としても名高い。
人種も多種多様だ。映画などでも馴染みのエルフやドワーフをはじめ、爬虫類系、哺乳類系、鳥類系など、多岐に渡る獣人が共存している。みんな髪や肌の色、鱗や毛並みなどが多彩で、煉瓦の街並みによく映えた。
その中でも、私のお気に入りは猫族の方々。イシェルアという一族は小柄で、陽気だ。始めてお会いした時は興奮したっけ。ふさふさと揺れる尻尾に思わず飛びついてしまって、お母様にめちゃくちゃ怒られた。そうだよね、猫にとって尻尾って大事な部分だし、ましてや獣人相手。場合によっては
そんな風に、人種の
その視察には、いつもお父様が付き添っていた。私の実家は、代々王家に仕えている侯爵家だ。歴代のご先祖様は文官だったらしく、騎士団長をしているお父様は異例と言っていい。パレードの先頭を白馬に跨り、凛々しい表情で闊歩する姿は格好良くて、私はいつも見に行っていた。こんなの、映画や漫画でしか見ないからワクワクするのも仕方ないでしょ?
私はそんなバーティア侯爵家の嫡男、ファルス・バーティアとして産まれてしまった。
そう、男なのだ。
この17年で、これが一番つらかった。
よくラノベでTSと呼ばれる状態だけど、あんな簡単に受け入れられるものじゃない事を痛感している。心は女のままだから、自分の体が気持ち悪くて直視できない。お風呂に入るのもひとりではままならず、いつもメイドの手を借りていた。
目隠しをして体を洗ってもらい、せめて女らしくと伸ばした髪の手入れをしてくれるメイド達には、頭が上がらない。
「ごねんね、いつも迷惑をかけて……私のせいで、あなた達まで悪く言われていると聞いたの。無理をしないで、お父様に言えば配置換えをしてくれるから……」
そう言った事があるけど、みんなは首を横に振る。
「何を仰います。
メイド長が得意満面に胸を張ると、他のメイド達も頷いた。それがどれほど嬉しかったか。彼女の勧めもあって、自室では女装で過ごした。ドレスは布の量やレースなどがふんだんに使われているから、男装よりも服飾費は
でも、人前に出る時はそうもいかない。どうしても目立ってしまう喉仏を隠すために、ハイネックが手放せなかった。この世界にはボクサーパンツなんて無いから、ぶらぶらするモノを布で押さえつけたている。時折具合が悪くなる事もあったけど、それ以上に嫌悪感が上回った。仕草や言葉使いも自然と女っぽくなるから、一部の人には変人だと思われている。