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第18話 そして醒めない夢を見る




あれから何日、何週間、何ヶ月過ぎたのだろうか。

あの光に包まれた後、私はレオの魔術によってここへ移動していた。

ここは私が彼らを軟禁していた宮殿とよく似た別の場所。リアムが私を閉じ込める為に自国に作らせた宮殿だ。


あの日から私と彼らの立場は逆転し、私に自由はない。

私に与えられた私の部屋によく似たこの部屋からでさえも彼らの許しなしには出られない。

だが、私の立場以外は彼らを縛っていたあの日々と何も変わらなかった。


私の生活には変わらず全て彼らが関わるし、彼らはあの日々と同じように私に甘く愛を囁く。


今度は私が彼らに囚われた。

今日も私は終わらない愛の中で彼らに囚われ続ける。




「エマ」




リアムが私を後ろから抱きしめて私の名前を愛おしそうに呼ぶ。

そして私の目の前には物欲しそうに私を見つめるルークとレオがいた。




「愛しているよ、エマ」


「…っ」




耳元でリアムが甘く囁く。

その甘い吐息に私の体は思わずびくんっと小さく反応した。




「ふふ。エマ、可愛い」 




そんな私の反応を見て今度はルークが愛おしそうに笑い、リアムに囁かれた耳とは反対の耳を甘噛みする。




「…あっ」




いきなりの刺激に私は思わず肩を揺らして甘い声をあげた。




「…あぁ、愛してる」




今度はレオが我慢できないといった様子で私の唇を自分の唇で乱暴に塞ぐ。




「んん…っ。ふあっ」




レオに深くキスされながらもさらに両耳をリアムとルークによって好きに弄られ始めたので私からまた甘い声が漏れ出た。


甘噛みをされたかと思えば、舐められ、耳の中に舌を入れられ、指で触られ、反則的な甘い刺激が両耳から私を襲う。


いつまでも続く終わらない彼らからの甘い刺激から私は逃れることができない。



何故、こんなことになったのだろうか。

何故、全てを持っていた私は全てを失い、私を恨んでいたはずの彼らにこうやって深く愛されているのか。

何故、彼らはあの頃と変わらない日常を繰り返しているのか。


日が沈みきっていない薄暗い部屋でなんの力もない私はただ彼らに抵抗もできず、なすがままだ。


わからないことばかりだが、ここ数ヶ月間、彼らと共に過ごしてきてわかったことがある。

それは彼らは確かに壊れて狂っているが同時に私を狂おしい程愛しているということだ。


あの時、彼らのこの狂った愛を信じて逃げ出さなければこんなことにはなっていなかったのだろうか。

またあの夢のような日々がただ永遠と繰り返されていたのだろうか。



気がつけば何故か涙が溢れていた。




「…ん、泣いてももうエマを解放するつもりはないから」




私の涙にすぐに気がついたレオが一度口付けをやめて皮肉げに私に笑う。




「…これがある限りお前はどこにも行けない。俺に囚われたままだ」




ぐいっとレオが私の首に付けられているブラックオパールのネックレスを人差し指で引っ張る。


このネックレスはレオが魔術を込めたものだ。

私がレオにルビーのピアスを付けたようにレオは私にこれを付けた。

このネックレスに込められている魔術は私の行動の制約と魔術の力の再封印。

何かのきっかで記憶のように元に戻らないようにレオが再度私の力を封印した。


そして行動の制約とは文字通りで、このネックレスがある限り私はこの部屋から出られず、もし出たい場合はリアム、ルーク、レオの許しと、この3人の内の誰かと部屋の外へいる間は身体的な接触をしていなければならない。

なのでこの部屋から出る時はいつも誰かと手を繋いでいた。


もちろんこのネックレスは私がレオに付けたピアスのように自分では取り外しは不可能だ。


彼らには一切の隙がなく私は彼らからもう二度と逃げられない。




「二度と逃がさないと言っただろう。諦めろ、エマ」




黙ったまま未だに涙を流し続ける私におかしそうにレオが笑う。もう私に囚われていたあの頃のレオはどこにもいない。




「最初から逃げ出さなければ僕たちはアナタに喜んで囚われていたのに。ああ、僕のかわいそうなエマ。ずぅとここで愛し合おうね」




後ろから私を抱きしめるリアムがくすりと笑って手に力を入る。リアムもまたもうあの頃のリアムではない。




「エマ、僕がエマをここでずっと可愛がってあげるからね。だから早く僕の所へ堕ちてきて」




仄暗い笑みを浮かべるルークが私の頬へ優しく触れる。ルークももうあの頃のルークではない。



今度はルークが私にキスを落とす。

するりとルークの舌が私の口内へ侵入するのと同時に私の涙も口の中へ入りほんのりと涙の味がした。



みんな狂っている。

それはきっと私もだ。




「…あ、い、して、…ず、っと」




ルークからのキスが終わると私は途切れ途切れになりながらも自分の意思を彼らに伝えた。



私ももう狂ってしまった。

彼らから狂おしい程愛されるこの空間が心地いい。

きっともう私も彼らを求めずにはいられない。




「もちろんだよ、エマ」




後ろから今度はリアムが私にキスをする。

リアムもルークもレオも。そして私も。

みんな幸せそうに仄暗い笑みを浮かべた。



今日もまた私はこの大きな檻に囚われる。

もう二度と逃げられない。だが私自身ここから逃げ出すつもりもない。


終わらない、醒めない夢をここで永遠と見続ける。

彼らと共に。いつまでも。



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