「愛だ」
私の叫びにレオは優しく微笑んでそう答えた。
仄暗いあの狂ったような笑みで。
「全てエマを愛しているからだ。お前を愛しているから俺たちは手を組み、持てるもの全てを使ってお前を見つけ出した」
「…愛?何を言っているの?アナタたちは私を愛してなんていないのよ!恨んで恨んで恨んで壊れてしまったの!そんなもの愛じゃない!」
どうすればレオたちが間違っているとわかってもらえるのかわからない。
叫んでも叫んでもレオはただ微笑んだままだ。隣にいるリアムとルークも同じだ。
「エマがそう言うのなら俺は壊れているのかもしれない。だが俺はそれでもいい。エマさえ俺の側にいてくれれば」
「そんなこと、ダメに決まってる…」
私に切なげに微笑むレオに私は力なく声を出した。
そして涙を流した。
「泣かないで、エマ」
涙を流す私の目尻にルークがキスを落とす。
「そうだよ。僕たちはエマを泣かせたい訳じゃない」
ルークがキスをした反対側の目尻にリアムも同じようにキスを落とした。
「…側にいて欲しい。あの頃のように僕たちと愛を囁き合って欲しいだけだよ」
リアムが切なげに、懇願するように私を見つめる。
「…そう。一年、私と離れてどうだった?」
絶望の中、私は覇気のない声でそう言うとリアムから順番にルーク、レオを見つめた。
「辛かったよ。夢の中で会えたとしても本当のエマでなければ僕は満たされなかった」
最初にリアムが切なげに微笑んで答える。
「会いたくて仕方なかった。ずっと寂しくて寂しくて堪らなかった」
次にルークが辛そうに涙を流しながら。
「孤独だった。エマがいない俺は空っぽだった」
そして最後にレオが苦しそうにそう答えた。
一年。私は彼らの前から姿を消した。
それでも彼らは目を覚さなかった。
これはもうきっと壊れただけで済む話ではない。彼らは私に強く執着してしまっている。
「…そうだったのね。でもアナタたちの幸せに私は間違いなく不要な存在なの。だから私のことは諦めて帰りなさい」
その執着がいつ消えてなくなるかわからないが、少なくとも今すぐには無理な話なのだろう。
それでも彼らが幸せになる為には私は不必要な存在だ。
だから私は彼らの幸せの為にも彼らの想いを拒絶した。
「アナタに選択権なんてない」
そんな私にリアムが仄暗く微笑む。
ルークもレオも同じように仄暗い。
リアムは…いや、彼らは私の拒絶を許さなかった。
「アナタはもうあの時のように権力も魔術の力もない。そんなアナタが僕たちを思い通りに動かせるとでも?」
くすりと不穏な空気を纏いながらリアムが私に笑う。
「さっきも言ったよね?僕には権力が、ルークには知識が、レオには魔術がある。僕たちはあの頃のアナタみたいにアナタを縛れる力を持っているんだよ?」
「…」
何も言えない。全てリアムの言う通りだから。
「僕の権力でエマの為にもう二度と逃げられないよう大きな宮殿という名の檻を用意した。
ルークの知識でアナタが絶対に逃げられないシステムを考えた。
そしてレオの魔術でそれを現実のものへと変えてみせた。
エマ、今度はアナタが僕たちに囚われる番だ」
美しい碧眼が私を捉えて離さない。
もう、逃げられない。
私は無力なのだ。
「さあ、帰ろう?エマ。僕たちの宮殿へ。もう二度と僕を捨てないでね?」
最悪の状況に絶望しているとルークが私の右手を優しく掴んだ。
「エマ、もう二度と俺の前から消えないでくれ」
左手はレオが力強く掴む。
「もう二度と逃げないでね?僕のエマ」
そしてリアムは私の左肩に優しく触れた。
彼らに特に意図はないのかもしれない。
だが彼らに触れられた時私は思った。
あぁ、捕らえられてしまった、と。
もう逃げられないのだ、と。
そして彼らがこの部屋に現れた時のようにこの部屋いっぱいに光が溢れ始めた。