「スライム!?」
「死んだはずじゃ!?」
「残念なのトリックなの!?」
酒場を出て直ぐの開けた場所を照らすのは、今日も眩い、おっきい月とちっちゃい月の
――そのおかげで倒したはずのスライムが
――{
スライムの二つ名もハッキリと。
「嘘でしょ、スライムってだけで厄介なのに、
ど、どういう事だ? 確かに俺の踵で
「――も、もしかして」
「メ、メディさん、何?」
「このスライムは、例え欠片でも残っていたら再生するとか?」
「え、それって無敵って事!?」
確かに、あの時もバラバラになった後、合体して襲いかかってきたけど!
【最強】でも消滅出来ないなんてキリがない――俺とメディさんが焦っていると、
「何を
って、フィアがこっちを向いた瞬間、
「あ、フィア!」
背後を見せたフィアにスライムが襲いかかってきた、けど、
「【炎聖】スキル!」
それを
「〈
振り向きざまだ思いっきりだ、スライムに燃えるハンマーを叩き付ければ、粘体の巨躯は浮かび上がり吹き飛ぶ!
「ぶ、物理攻撃でスライムの実体を捉えてます!」
「”聖”なる力のおかげ!?」
ニヤッと笑ったフィアは、そのまま追撃をかけた、一撃必殺のはずのハンマーを、炎の爆発力で縦横斜めに振り回しながら、何度もスライムに叩き付けていく!
「――凄い」
思わず俺がぽつりと呟けば、
「そうでしょそうでしょ!」
嬉しそうにフィアが喜ぶ。
「良く見なさい、〔何も無しのアルテナッシ〕! 私が最強モンスターのスライムをぶっつぶす所を!」
そう言って、思い切り振りかぶって、
「なーにが{
スライムを、
「
手応えがあったのか笑みを浮かべるフィア、
――だが
「え?」
ビタリとフィアの動きが止まった、あれ、どうした?
ハンマーが動かないのか――いや、
「う、嘘」
ハンマーが、握られてる!?
スライムが人間みたいな掌を作りだして、それで!?
「きゃあ!?」
「あっ!」
「ハンマーを奪われた!?」
い、いや、武器を奪うだけじゃない、なんかそのままみるみる内に大きくなって、
顔の無いスライムに顔が出来て、体も出来て、
え、これって、
「
身の丈3メートルのフィアそのものになったスライムは、そのままモグラ叩きのようにフィアにハンマーを振り下ろして、
「あっ」
――潰される、そう思った瞬間
周囲の空気がパチッと弾ける。
「【紫電】スキル」
それは隣のメディさんが、
「
俺を助けた時と同じ技を使ったという事で――
「わわっ!?」
ダンダダァン! と、ハンマーが振り下ろされた時には、メディさんはフィアを抱えるようにして向こうに居た。
「だ、大丈夫ですか、フィア様」
「あ、ありがとう、だけどちょっと早くどいて!? あいつに襲われる!」
「す、すみません、このスキルを使うと、
「そうなのぉ!?」
折り重なる二人に、フィアの姿形になったスライムが、迫ってく、
――だから
「おい!」
俺はまた、
「こっちだ!」
スライムに、声をあげていた。
――その瞬間
「あっ」
ノーウェイトで飛んできたスライムが、そのまま俺にハンマーを振り下ろす!
「わわわ!?」
「ちょ、ちょっとアル!?」
その後も繰り返されるハンマーの攻撃、それを必死でかわしていると、
「アル様、これを!」
メディさんの言葉と供に――俺に何かが投げられてきた。パシっと受け取るとそれは、
「――
メディさんが、スライム相手に使ってた武器だ。
「貴方の主人に託しなさいと、メイド長から頂いた物です、銘は”
「だからなんでアルが主人なのよ!?」
フィアがそう叫ぶ中で、俺は鞘を左手で握り、右手で柄を持った。
施設の訓練でも使った事もない、初めて持つ武器を持ちながら、スライムに構える。そして、
「【○○】スキル!」
そう言って、俺の目の前にあの時のように、【○○】を――いや今は【○○。】を浮かばせた。
「ちょ、ちょっとあんた、逃げなさいよ!? 刀なんか使った事ないでしょ!?」
フィアのあの反応、俺が【○○】を浮かべてるのは見えてないのか、いやそれよりも早く今は、こいつを倒す力を!
俺は、思いっきり声を張り上げた。
「【最強】!」
だが、
[エラーです]
「へ?」
[一度使ったスキルは、リセットされるまで使えません]
「ええ!?」
と、驚いてる間に、スライムがまたハンマーを振り落としてきたので逃げる!?
「ちょ、ちょっとあんた、何を叫んでんのよ!?」
「い、いや俺のスキルが」
「あんたは最強じゃなくて無能でしょ!?」
ち、違うんだって! 使えないのを知らなかっただけで、じゃ、じゃあ最強がダメなら、これだ!
「【無敵】!」
この力で皆を助ける――
[エラー]
「え?」
[全ての
「えええ!?」
「何が”えええ”よ!?」
フィアのツッコミに返す余裕もないくらい、俺は自分のスキルの
ちょ、ちょっと待って、○○。って、この最初の二文字の後にちっちゃい○にも文字をいれなきゃいけない?
そ、そんなのどうやって!
とか言ってたら、うわぁ!?
「アル!?」
「ご主人様!」
フィアの形をしたスライムは、俺を容赦無くハンマーで攻撃してくる、絶望を絶望で叩きつぶそうとしてくる。もう必死に逃げるしかなくなって、どうしようもなくなって、
そしてとうとう――俺はこけた。
「ぎゃっ!?」
人間、つまずく事もある、普通なら立ち上がればいい、だけど戦いの最中じゃそれは、
――致命傷だ
「あ」
振り返れば、ハンマーの面が俺を潰そうとしてて、
「嘘っ」
メディさん、そして、
「――お兄ちゃぁん!」
フィアの懐かしい呼び方が聞こえる中で、なんだか光景がスローモーション、走馬燈みたいになって、
それでも相変わらず、【○○。】は浮かんでてて、
(。まで埋めろって、なんだよ)
スキルは
――そんなの無理
……あれ、でも、
待てよ、
――スキルが漢字じゃなきゃいけないって、誰が決めた?
そう思って、頭の中に自然とある言葉が浮かんだ時、
ハンマーは、
俺に、
ぶちあたる、
――だけど
俺はそれを鞘で受け止めて、
後ろへと、受け流す。
「【パリィ】スキル」
そして、相手の力を利用してくるりと刀を抜いて、
斬りつける!
「〈
ハンマーの力を、そのまま刀に移したかのような一撃は、スライムの体をグラつかせて、
「ええ!?」
「ご主人様」
――そして俺だけが見えるステータス欄には
【パリィ】スキル Aランク
スキル解説[あらゆる攻撃を受け流し、
。をちっちゃな文字でしっかり埋めた、スキルの名前と能力が浮かび上がっていた。