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1-4 スライムリベンジざまぁタイム

「スライム!?」

「死んだはずじゃ!?」

「残念なのトリックなの!?」


 酒場を出て直ぐの開けた場所を照らすのは、今日も眩い、おっきい月とちっちゃい月の親子月異世界要素、おかげでこの世界の夜は前世の世界よりも明るくて、

 ――そのおかげで倒したはずのスライムが

 巨大化3メートルして戻って来た姿も、そして、

 ――{ノーフェイス顔無き悪意

 スライムの二つ名もハッキリと。


「嘘でしょ、スライムってだけで厄介なのに、ネームドモンスター名前付き!?」


 ど、どういう事だ? 確かに俺の踵で爆発四散木っ端微塵したモンスターが。


「――も、もしかして」

「メ、メディさん、何?」

「このスライムは、例え欠片でも残っていたら再生するとか?」

「え、それって無敵って事!?」


 確かに、あの時もバラバラになった後、合体して襲いかかってきたけど!

 【最強】でも消滅出来ないなんてキリがない――俺とメディさんが焦っていると、


「何を乳繰り合っイチャついてるのよあんた達!?」


 って、フィアがこっちを向いた瞬間、


「あ、フィア!」


 背後を見せたフィアにスライムが襲いかかってきた、けど、


「【炎聖】スキル!」


 それを読んでいたわざと隙見せたかのように、フィアは、ハンマーを握る手を燃やし、彼女の武器その全体を燃やしながら、


「〈ファイアースターター文明開火の火花散る!〉」


 振り向きざまだ思いっきりだ、スライムに燃えるハンマーを叩き付ければ、粘体の巨躯は浮かび上がり吹き飛ぶ!


「ぶ、物理攻撃でスライムの実体を捉えてます!」

「”聖”なる力のおかげ!?」


 ニヤッと笑ったフィアは、そのまま追撃をかけた、一撃必殺のはずのハンマーを、炎の爆発力で縦横斜めに振り回しながら、何度もスライムに叩き付けていく!


「――凄い」


 思わず俺がぽつりと呟けば、


「そうでしょそうでしょ!」


 嬉しそうにフィアが喜ぶ。


「良く見なさい、〔何も無しのアルテナッシ〕! 私が最強モンスターのスライムをぶっつぶす所を!」


 そう言って、思い切り振りかぶって、


「なーにが{ノーフェイス顔無き悪意よ!}」


 スライムを、


あんたスライムに顔が無いのは当たり前でしょ!」


 強烈に、バチコーン!叩く。

 手応えがあったのか笑みを浮かべるフィア、

 ――だが


「え?」


 ビタリとフィアの動きが止まった、あれ、どうした?

 ハンマーが動かないのか――いや、


「う、嘘」


 ハンマーが、握られてる!?

 スライムが人間みたいな掌を作りだして、それで!?


「きゃあ!?」

「あっ!」

「ハンマーを奪われた!?」


 い、いや、武器を奪うだけじゃない、なんかそのままみるみる内に大きくなって、

 顔の無いスライムに顔が出来て、体も出来て、

 え、これって、


フィアぃぃぃっ!?」


 身の丈3メートルのフィアそのものになったスライムは、そのままモグラ叩きのようにフィアにハンマーを振り下ろして、


「あっ」


 ――潰される、そう思った瞬間

 周囲の空気がパチッと弾ける。


「【紫電】スキル」


 それは隣のメディさんが、


〈サンダーステップ〉電光石火!」


 俺を助けた時と同じ技を使ったという事で――


「わわっ!?」


 ダンダダァン! と、ハンマーが振り下ろされた時には、メディさんはフィアを抱えるようにして向こうに居た。


「だ、大丈夫ですか、フィア様」

「あ、ありがとう、だけどちょっと早くどいて!? あいつに襲われる!」

「す、すみません、このスキルを使うと、暫く動けなく足がガクガク

「そうなのぉ!?」


 折り重なる二人に、フィアの姿形になったスライムが、迫ってく、

 ――だから


「おい!」


 俺はまた、


「こっちだ!」


 スライムに、声をあげていた。

 ――その瞬間


「あっ」


 ノーウェイトで飛んできたスライムが、そのまま俺にハンマーを振り下ろす!


「わわわ!?」

「ちょ、ちょっとアル!?」


 その後も繰り返されるハンマーの攻撃、それを必死でかわしていると、


「アル様、これを!」


 メディさんの言葉と供に――俺に何かが投げられてきた。パシっと受け取るとそれは、


「――ヤマトブレード日本刀


 メディさんが、スライム相手に使ってた武器だ。


「貴方の主人に託しなさいと、メイド長から頂いた物です、銘は”霊犀れいさい”!」

「だからなんでアルが主人なのよ!?」


 フィアがそう叫ぶ中で、俺は鞘を左手で握り、右手で柄を持った。

 施設の訓練でも使った事もない、初めて持つ武器を持ちながら、スライムに構える。そして、


「【○○】スキル!」


 そう言って、俺の目の前にあの時のように、【○○】を――いや今は【○○。】を浮かばせた。


「ちょ、ちょっとあんた、逃げなさいよ!? 刀なんか使った事ないでしょ!?」


 フィアのあの反応、俺が【○○】を浮かべてるのは見えてないのか、いやそれよりも早く今は、こいつを倒す力を!

 俺は、思いっきり声を張り上げた。


「【最強】!」


 だが、


 [エラーです]


「へ?」


 [一度使ったスキルは、リセットされるまで使えません]


「ええ!?」


 と、驚いてる間に、スライムがまたハンマーを振り落としてきたので逃げる!?


「ちょ、ちょっとあんた、何を叫んでんのよ!?」

「い、いや俺のスキルが」

「あんたは最強じゃなくて無能でしょ!?」


 ち、違うんだって! 使えないのを知らなかっただけで、じゃ、じゃあ最強がダメなら、これだ!


「【無敵】!」


 この力で皆を助ける――

 [エラー]


「え?」


 [全ての空白を埋めてください]


「えええ!?」

「何が”えええ”よ!?」


 フィアのツッコミに返す余裕もないくらい、俺は自分のスキルの仕様システムに絶望する。

 ちょ、ちょっと待って、○○。って、この最初の二文字の後にちっちゃい○にも文字をいれなきゃいけない?

 そ、そんなのどうやって!

 とか言ってたら、うわぁ!?


「アル!?」

「ご主人様!」


 フィアの形をしたスライムは、俺を容赦無くハンマーで攻撃してくる、絶望を絶望で叩きつぶそうとしてくる。もう必死に逃げるしかなくなって、どうしようもなくなって、

 そしてとうとう――俺はこけた。


「ぎゃっ!?」


 人間、つまずく事もある、普通なら立ち上がればいい、だけど戦いの最中じゃそれは、

 ――致命傷だ


「あ」


 振り返れば、ハンマーの面が俺を潰そうとしてて、


「嘘っ」


 メディさん、そして、


「――お兄ちゃぁん!」


 フィアの懐かしい呼び方が聞こえる中で、なんだか光景がスローモーション、走馬燈みたいになって、

 それでも相変わらず、【○○。】は浮かんでてて、


(。まで埋めろって、なんだよ)


 スキルは漢字二つ二字熟語、それが三文字になるだけでもおかしいのに、小さい○にもいれろって、

 ――そんなの無理

 ……あれ、でも、

 待てよ、

 ――スキルが漢字じゃなきゃいけないって、誰が決めた?

 そう思って、頭の中に自然とある言葉が浮かんだ時、

 ハンマーは、

 俺に、

 ぶちあたる、

 ――だけど

 俺はそれを鞘で受け止めて、

 後ろへと、受け流す。


「【パリィ】スキル」


 そして、相手の力を利用してくるりと刀を抜いて、

 斬りつける!


「〈リベンジフラッシュ秒要らずの復讐譚〉!」


 ハンマーの力を、そのまま刀に移したかのような一撃は、スライムの体をグラつかせて、


「ええ!?」

「ご主人様」


 ――そして俺だけが見えるステータス欄には


 【パリィ】スキル Aランク

 スキル解説[あらゆる攻撃を受け流し、反撃ざまぁする]


 。をちっちゃな文字でしっかり埋めた、スキルの名前と能力が浮かび上がっていた。


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