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1-end からっぽな俺の――

「ま、【○○マルマル】スキル、そういう力だったのですか」

「ああ、うん」


 酒場兼宿屋の泊まり部屋にて、ベッドに腰掛けながら、俺はまず、俺の従者メイドになったメディに自分のスキルについて種明かしをした。


「空白の部分はランダムで、文字が既に埋まってる事もある、ツボにハマれば強力ですが、使い勝手が悪いピーキー性能ですね」

「そうなんだよ、しかも」


 俺は目を細めながら、ステータスのスキル欄をみつめる。


 【××】スキル -ランク 

 スキル解説[インターバル中、使用再開まで約10分お待ちください]


「なんか今は、使えない」

「それは、困りますね」

「10分後ってなってるけど、1日使えないとかそういうパターンとかあったらどうしよ……」


 それに、宝石から【○○】が浮かんで、それに言葉をあてはめたら写真になった意味も、どういう条件で起きたのかハッキリとしてない。

 自分のスキルなのに、解らない事がまだ多く。

 はぁ、と言って溜息を吐く俺に、

 何故か、メディは笑った。


「スキルの開示は信頼の現れ」


 確かに、手の内を明かすっていうのは、本来簡単にすべき事じゃない。でもメディは、一応は俺のメイドになった。

 ならば自分のスキルについての説明は必須、と思うのだけど、


「ここまで私を信じてくれて、ありがとうございます」


 彼女は本当に嬉しそうに頭を下げる。


「い、いやいいよ、それに」


 そこで俺は、ハッキリと伝えた。


「――まだ、メディに言えない事があるんだ」

「え?」


 そう、俺はまだ彼女に秘密がある。

 それは転生の事もだし、俺が幸せにならないと爆発する、と女神様に言われた事もだ。


(いや、言わない必要も無いんだけど、言う必要も今は無いって感じで、転生なんて言われてもぽかーんだろうし、爆発する云々は、俺自身が良く解ってないし)


 それが、友達であるメディに隠し事をする理由、だけど、


「隠し事をしてる事は隠したくないから言うよ、だけどもし、どうしても聞きたかったら聞いて欲しい」


 これが正しいかは解らないけど、俺はそう言った。

 するとメディは、にこっと笑った。


「誰にでも秘密はあるものです、私から不用意に問うたりはしません」

「そっか、ありがと」


 そう言ってくれた。

 ……友達っていいものだな。

 今、考えると俺って、施設で誰かの役に立てるようにしてたけど、誰かと友達となろうとしなかったな。

 俺と皆に壁が出来てたのも、当然か。


「ご主人様、帝国学園の入学試験の話をしたいのですが」

「ああ、うん」

「――ちょうど明日です」

「え!? そうなの!?」


 急というか、寧ろ、都合が良すぎるというべきか、その知らせに俺は思わず声をあげた。


「試験後即入学ですので、フィア様は入学式の為、既に帝国へ向かいました」

「あ、そうなんだ」

「そもそもの話ですが、ご主人様は、帝国学園がどういうものかご存じでしょうか」

「……自分には一生縁の無いものだと思ってたから、余り詳しくは」

「解りました、簡単に説明しますと、帝国学園は”英雄”を育てる為の学園です」

「――英雄」


 なんか、そういう漫画あったような気が。読んだ事は無い漫画禁止けれど。


「入学試験の内容は毎回変わりますが、ほぼ実戦形式です、去年ですといきなりゴブリンの群れに突き落とされたとか」

「ス、スライムの次の次くらいに強いモンスター? スパルタ過ぎない?」

「それだけ過酷という事です、なので明日の試験が受かるかどうかは」


 メディは、ハッキリと、


「ご主人様の【○○】スキルが、どんなスキルになるかによります」

「……そうだよな」


 【最強】みたいな、SSSランクを引き当てられればそれでいい、だけど【ぬるぽ】みたいな、Eランクも有り得る。まぁ【ぬ○○】だから、【ぬすむ】とかならいけたかもだけど。


「ガチャみたいなもんだよな、俺のスキル」

「ガチャ?」

「あ、いや、なんでもない」


 危ない、前世知識をお漏らししてしまった。こういう事が積み重なると、転生バレしちゃいそう。


「ともかく、今のご主人様がすべき事は、試験に備えてゆっくり休む事です」

「ああ、そうだね」

「ご主人様はそのままベッドでお眠りください」

「うん?」

「私は床で寝ますので」

「ええ、ちょっと!?」


 メディさんが当たり前の様にそう言うので、慌てて声をあげる。


「いやいや、そんな、ダメだって! 女の子を床になんか寝かせられないよ!」

「い、いえそんな、明日の為にご主人様にはゆっくり休む必要が」

「いやでもさ、メディをこんな硬い床で寝かせるなんて!」

「……わ、わかりました、それでは」

「……どうしたの、赤い顔して」

「お、同じベッドで、添い寝してさしあげます!」

「ええ!?」

「ほ、本来でありましたら、赤ちゃんをあやす用にメイド長から教わったものですが、ご主人様の為なら」

「いやいや、それは余計にまずいって!?」

「わ、私も恥ずかしいですが、最早それしか」


 そう行って迫ってくるメディに、


「……あ、あの実は俺」


 と、罪悪感もあって、隠し事享年35歳のおっさんを告白しようとしたその瞬間、

 ――ステータス画面が自動で開いた


「わっ」

「ご、ご主人様?」

「いや、スキルのメニューが――えっ!?」


 俺は、声をあげて、驚いた、だって、


 【チー○


(ス、スキルの最初二文字がチー!? こんなの残り一文字に”ト”をいれれば、【チート】だ!?)


 入学試験前夜に訪れた、約束された勝利のスキルに、俺の心は色めきたって、そして、


【チー○○】


「四文字ぃ!」

「ご主人様!?」


 と、あっという間に絶望へ叩き込まれた。

 ちなみに一つだけのベッド問題は、素直に酒場兼宿屋の主人に頼んで、布団ヤマトマットレスを用意して貰う事で解決した。

 ――転生して、16歳の誕生日

 この日から、からっぽな俺のハートフルデイズが始まった。






 【チー○○】スキル -ランク 

 スキル解説[     ]

 アルズハート

 [【笑顔】【○○】【○○】【○○】【○○】【○○】【○○】]


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