オーガニ族の村中央にある、高さ10メートルの石造りの遺跡。
それそのものが、黄金色に光り輝いてる理由、それは、
「まさか、ゴッドフット先輩のスキル!?」
そう、こんな現象、スキルじゃないと説明がつかない!
だ、だけど、遺跡を金ぴかに光らせてどうしたいんだ!?
「聖女様、聖女様ぁ!」
え、ゴッドフット先輩、頂点から俺達へ向かって――駆け下りてきた!?
神職者の恰好で、スプリンターみたいに手を直角にした状態で素早く、意外にフィジカル! 階段は結構急角度なのに、こける様子を一切見せない!
「早くそのような男からお離れをぉっ! この地も、その男も、聖女様を惑わす穢れた存在!」
そう言ってとうとう段々遺跡の麓まで降りてきたゴッドフット先輩を、
「ふざけんじゃねぇぞコラァッ!」
「いてこますぞコラァッ!」
激昂したリーダーや村の人達が、釘付き
だけど、
「【神聖】スキル」
ゴッドフット先輩は、スキルを使って、
――女神の小像を右手で握りしめて
「〈
ふっつ~に殴り飛ばした、ええ!?
「げはぁ!?」
「ごはぁ!?」
そ、そのまま殴り飛ばされるオーガニ族の人達、それを一切顧みる事無く、
「次はぁっ!」
泣きながら、鼻水すら垂らしながら、先輩は俺に向かって一直線に走ってきて、そして、
俺との間合いを詰めた先輩は、
「貴様を
その拳で殴りかかってきて、躱す間もないその一撃を食らう直前で、
――俺の体は瞬間移動した
「あっ!」
これって、セイカ様の【奇跡】だ! 俺が移動したのは、元居た場所から10メートルくらい離れた場所の、2メートルくらい空中、
「いたっ!」
背中から落ちた俺、だけどその痛みを我慢しながら立ち上がる、だけどその時には、
「ちょ、あかんよ、やめて!」
セイカ様が、まるで米俵のように、ゴッドフット先輩に担ぎ上げられている! 本当にどこまでフィジカル重視!?
「セ、セイカ様、俺をそっちにテレポートさせて!」
「あ、あかん、アル君を危険な目にあわせるような【奇跡】は使えへんのよ!」
「そんな!」
そのやりとりを聞いてゴッドフット先輩は、
「ああ聖女様、もうどうかあのような者と言葉を交わすのはおやめください!」
そう言って、セイカ様を担いで、遺跡の方へ走り出した。俺も慌てて追いかけるけど、どんどん距離が離れていく!
「ああ、解った、解りました! 何故聖女様がここに降臨されたのか、全ては!」
そして、村の人達も止める事が出来ないままに、
「この女神の加護により輝く遺跡の中、私の手で、貴方様の穢れを清める為だったのですねぇ!」
その涙ながらの笑顔と供に、魔法を唱えて遺跡の扉を開き、そして、
――その奥へと引っ込んでしまった
「セイカ様!」
俺が叫びながら、扉へ近寄るよりも先に、
「フザケンナコラー!」
「デテコイヤコラー!」
村の人達が、扉へ向かって棍棒を叩きつけるけど、その瞬間、
――遺跡全体の金色の光が増して
なんかビームみたいなのを放ち始めた!?
「ギャー!?」
ああ、遺跡から放たれた光線が、オーガニ族の人達に直撃したぁ!? あばばばば! って言ったあと、ばたんきゅーっと倒れる!
「だ、大丈夫ですか!?」
俺は慌てて、倒れた一人に声をかけたなら、
「そ、そこんところ
あ、生きてはいるみたい、髪がチリチリパーマみたいになって、なんだか雷様みたいだけど。
「これじゃ遺跡に近づけねぇぞコラァッ!?」
「逃げるしかねぇんじゃねぇかオラァッ!?」
そして村中に降り注ぐビーム、オーガニ族さん達が阿鼻叫喚の地獄絵図、
――状況を整理する
遺跡にゴッドフット先輩は、セイカ様と一緒に立てこもってしまった。
あの扉は、ゴッドフット先輩の魔法じゃないと開かない。
そしてこうやって色々と考えているうちに、
「うわぁ!?」
チュドン! って、村の人達へと、遺跡ビームは飛んでくる! こ、こから逃げなきゃいけないのか!?
――いや、ゴッドフット先輩は、浄化するとか言ってた
下手したらこの村どころか、このジャングルすら、ビームで燃やされてしまうんじゃ、
(――どうすれば)
……どうすればなんて、出来る事なんて、本来は一つしかない。
待つ事だ。
今のゴッドフット先輩は、明らかに
あるいは、聖都の偉い人達や、メディやエンペリラ様の助けを待つ、という事も出来るかもしれない。
(だけど)
だけど、扉の向こうには、
友達になろうとしたばかりの、セイカ様が居る、
そもそも"落ち着くのを待つ"なんて事そのものが、甘い考えかもしれない、
――扉の向こうで最悪の事態が起こるかもしれないのに
何もしないなんて嫌だ、ならばせめて、
(考えろ、考えろ、ただ待つだけじゃなくて、何か出来る事は無いかって!)
心の中で、己を鼓舞するような言葉を絞り出してる最中も、
「うわっ!」
遺跡はビームを放ってくる、俺はそれをかわしながら、真っ先に確認するのは、
――ステータス欄のスキル
(今日一日で、穴埋め問題のほとんどが埋まっていった)
まるで"神様"が、この未来を予測していたかのように、
(これは絶対偶然じゃない!)
問題を出したのは、セイントセイカ様とも繋がりがあるはずの存在、セイントセイラ様、
ならばセイカ様を救う方法も、スキルの中にあるはず!
(残りのお題の二つの中で、気になるのは一つ――)
1【○○○○○】 [魔法の呪文]
(魔法、扉を開く為の呪文!)
何故か――それは予想よりも確信めいた衝撃になって俺を貫き、そして、俺を扉に向かって走らせていた。
「おい角無しぃ!?」
「危ねぇぞコラァ!?」
木や建物の陰に隠れているオーガニ族さん達の心配の言葉、それにすら振り返らず、俺は遺跡に向かってただ駆ける。ビームの威力は、致命傷に至らないと解っていても、それが頬や体をかすめる度に、心臓が引きつるように痛む。
だけどそれでも俺は、走る、走る、
(ああ、扉を開く魔法の呪文ってなんだ!)
それすらも定まってない、走りながら考える、いや、思い出そうとする、
(心の奥では解ってるはずだ! だから、扉へ向かって走ってるんだろ俺!)
必死に頭を回転させた、その時――俺の足元をビームが打った、当たりはしなかったけど思いっきりこける俺、だが、
「う、うううっ!」
うなりながらいっそ前へと飛び込んだ、そして無理やり前転して起き上がり、また扉を目指す、
(【○○○○○】、五文字を埋める、扉を開く呪文)
そして――魔法で堅く閉じられた、遺跡の扉へと辿り着き、
(あ、そっか)
俺は、
(簡単じゃないか)
魔法を唱える。
「ヒラケゴマ!」
【ヒラケゴマ】スキル Sランク
スキル解説[開けゴマスキルの下位互換、ほぼ全ての扉を開く事が出来る]
スキルの解説の通り、俺の前世でも有名な魔法の呪文は、目の前の硬い扉を開いて見せて、そして俺は、
開いたドアの隙間へと、ビームから逃れるように、身を滑り込ませた。
ズザザザザァッ! っと、
「いつっ!?」
ズザ滑りする前のめり、うつ伏せ、軽い痛みに目を閉じていれば、後ろでバタンっと、扉が閉まる音がする。
俺は、身を起こしながら、目を開く、
――そこには
「……ああ、何故」
泣いているゴッドフット先輩と、
「何故」
それを、沈痛な面持ちでみつめるセイカ様と、そして、
「聖女様を、穢そうとするのですか」
遺跡の中央に聳え立つ、
巨躯の女神像、そこに立っていた。
「まぁいい、いいでしょう、見なさい、この奇跡を、恵みを与えんとせんと女神の加護を」
黄金の川のようにギラつくのではない、清浄さすら感じさせる金色の光を帯びながら。その光は、さながら女神の恵みのように、この大きな空間全てを照らしている。
「ああ、なんたる清浄なる光、この奇跡を見れば理解するでしょう?」
そして先輩は、言い切る。
「この世に神はただ一つと」
……先輩の言う通り、かつてここには女神様を崇拝する人達がいて、この遺跡で密やかに信仰が行われていた。
確かに、そういうストーリーもあり得なくはない、だけど、
「不自然なんよ」
違和感を、聖女様自らが言った。
「礼拝の場所としては、あまりにも殺風景すぎるよ?」
そうだ、だだっ広いこの空間に、ただ女神像があるばかり。
本当に女神を祀るのであれば、内装に気を配るだろうに、俺にはこの場所は、せいぜい、緊急避難場所にしか思えない。
「……そもそもオーガニ族は、自然と供に生きる人達です、その村の中心に、女神の遺跡があるのはなんでですか?」
俺も、リーダーさんが言っていた疑問を、問いかける。
だけどゴッドフット先輩は、
重なった追及にすら、笑顔で答える。
「決まってるじゃないですか」
ああ、ゴッドフット先輩は疑っていない。
「女神の奇跡です」
この人の信仰は、本物だと解る、
だからこそきっと――セイカ様は、
「奇跡やないよ」
悲しい顔をしている。
……その時俺は、
7【○○】 [罪]
最後の問題を、穴埋めの言葉を、
使う必要もないこのスキルを、
埋めた。
「――嘘はあかんよ」
【ウソ】スキル -ランク
スキル解説[人を騙す事、他人も、そして自分も]