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5-11 チェイス! チェイス! チェイス!

 オーガニ族の村の中心にあり、今は、黄金色に輝いている遺跡、それが今、

 ――崩壊した


「ああああ、遺跡がぁ!?」

「角無しと聖女がいるんだぞコラァッ!?」


 砂煙と地響きをたてて崩れていく遺跡、部族の象徴であるものが破壊された事よりも、俺達の心配をしてくれる、頭チリチリのオーガニ族さん達、

 ――そしてその状況を俺が把握しているのは


「いやおい、空を見ろ!」

「飛んでやがるよろしく夜露死苦ぅ!?」


 セイカ様の【奇跡】スキルで、瞬間移動して抜け出したからだ――このジャングルに来た時みたいに、俺は、セイカ様に抱えられた状態で、ゆっくり下降している。

 そして遺跡の砂煙が晴れたと供に、


「な、なんだこのでっかい女神は!?」

「俺達のアニマルバイクよりゴールデンじゃねぇか!?」


 巨大な黄金の女神が――それを真似したスライムが――現れるを見た。

 そしてスライムは、瓦礫となった遺跡の輝きを吸収していく。


「セイカ様、これって」

「なるほど、遺跡全体を、うっすらスライムが覆ってたんやね」


 遺跡の発光の正体はそれか、なんて思っていると、


「――浄化する」


 先輩の声と供に、女神の巨体から、


「〈クリアランスビーム穢れ払いの光売り!〉」


 全方位に向けてスプリンクラーみたいにビームが放たれる!


「うわぁ!?」

「ギャー!?」

よろしく夜露死苦ぅ!?」


 む、村中へ放たれるビームの雨! なんか威力が増してない? 遺跡表面のスライムも合体したから!?

 ビームで荒れる地面に着地した俺達。セイカ様の腕から降りながら、俺は彼女に尋ねた。


「あの、セイカ様の【奇跡】スキルで、スライムはやっつけられますか!?」

「ごめん! うちのスキルは守りとか移動とか補助メインなんよ! それにいくら【奇跡】言うても!」


 話している途中で――ビームがまた飛んできた! けれどセイカ様が両手を前にやると、ビームは、まるで俺達を避けるように反れていった。


「こ、こうガン攻めされたら、奇跡が間に合わへん隙が出来るよってに!」


 そ、そっか、奇跡を頼るにも限界がある、だったらもう最後の希望は俺のスキル、なんだけど、


 【穴埋め最終問題】スキル -ランク Lv2

 スキル解説[全部漢字で埋めてね!]

 【○○○○】 [今日一日を振り返って]


 なんでこの状況で問題追加!? 流石にちょっといたずら試練が過ぎるよセイラ様!

 とか思っていると、セイカ様が奇跡で弾いたビームが、

 ちゅどーん、っと、


「「あっ」」


 近くにあった木をへし折って、それが俺達に倒れてきて、


「「ああああ!?」」


 早速奇跡が間に合わない状況に、押しつぶされそうになった時、

 ――何かが俺達の体にぶつかった


「うわっ!?」

「きゃあ!?」


 衝撃はあったけど痛みは少ない、そして空中に浮かんだ俺達が落ちた先は、

 ――アニマルバイクの背

 俺は慌ててハンドル代わりの角を握って、セイカ様は俺の腰をぎゅっと掴んだ、走り出すアニマルバイク


「この子、レースの時のうちらの相棒バイク!」

「助けてくれたの!?」


 俺達にぶつかって、角で空中へ放り上げて、そのまま背にキャッチしたアニマルバイクは、俺達を乗せて、村の外へと飛び出した!

 俺は慌ててハンドルを握り、セイカ様と二ケツで走り出す!


「逃がしません!」


 女神スライムが空を飛んで追いかけてくる、ビームの雨をハンドルをさばいてかわしていく、

 一見、危機を脱出したかのようにも思えるけれど、


(駄目だ、このまま逃げ続けるだけじゃ)


 それこそ、逃げる事だけ考えるなら、セイカ様の【奇跡】スキルで学園まで瞬間移動も出来るかもしれないけど、

 そうしたら、


「先輩が爆発してしまう!」


 そう、ただ逃げればいいって話じゃない。先輩がスライムに乗っ取られて、心も体もバラバラになってしまう。

 そもそも完全に先輩を乗っ取ったスライムが、どれだけ強くなるかも解らない。だから、なんとか倒さないといけないけど、


(【○○○○】を埋める言葉が思いつかない!)


 今日一日を振り返ってって何!? 充実しすぎて濃すぎる日だったのは確かだけど! なんにも思いつかない!


(どうすれば……!)


 そう、一人じゃどうにもならない事に、

 悩む俺は、


「――あっ」


 一人じゃない事を、思い出す、そう、


「セ、セイカ様!」

「な、何!?」


 友達になろうとした人が、すぐ後ろにいる事を。だから俺は、


「俺のスキルは【○○】マルマルです!」


 ――自分の秘密を開示すれば


「……いや、マルマルってなにぃなんだ!?」


 ああ、当然の反応をされる! 相談にのってもらおうと思ったけど厳しい!?

 いやともかく説明しないと!


「く、空白に言葉を埋めるスキルなんです、それで今は四つの○を、四文字の漢字四字熟語で埋めなきゃいけなくて!」

「何それ!? 好きなスキル使い放題やん!」

「いやそれが、今はクイズ形式になってて、それでヒントが[今日一日を振り返って]で」

「――振り返る」


 セイカ様は、


「今までのスキルも穴埋め問題やったの!?」

「え、はい、今日一日で全部正解出来て」

「振り返るって、それちゃう!?」

「――あっ」


 そっか、その可能性はある! 今日どんなスキルを使ったか!

 セイカ様に言われた俺は、使った順にスキルを思い出す。


「えっと、【コン】! 【キャッチ】! 【ヤセイ】! 【ツノ】! 【ヤンキー】! 【ヒラケゴマ】! 【ウソ】!」


 共通点は全く無い、だけど何か法則性は無いか? 漢字に戻すとか、

 ――あ、いや待て

 解いた順番はバラバラだけど、元々123って並んでいてナンバリング、ていう事は、これでそれであれでどれでこそあど言葉

 ――あっ


「ああ、そっか!?」


 俺は答えにたどり着き、思わず声をあげた。


「解ったん!?」

「はい、セイカ様!」


 そう元気よく答えた後、角というアクセルを全開にして、角というハンドルインド人を右に傾けてから、ストレートに入った俺は、


「飛ばしますから、しっかりつかまっていてください!」

「うん!」


 そう言って、アクセルを緩めないままに加速する。偽女神との距離を離していく、だけど、


「あれ、ビームが止まった!?」

「なんで!?」


 その事を不思議に思って――アニマルバイクにまたがったままに二人で振り返れば、


「「あっ」」


 先輩が、停止した女神が、


「奇跡ごと燃やしてやります!」


 その巨大な黄金の腕で、目の前に幾つものビームを束ねていて、そして、


「〈ゴッヘルベルカノン!地獄への追跡曲〉」


 それを時間差で放ってきた!


「うわぁぁぁぁ!?」


 次々とバイクアニマルへ向かってくる連続ビーム! アニマルバイクでかわして、避けきれないのはセイカ様が【奇跡】で防ぐ!

 やられればピンチ、だけど、


「チャンス!」


 俺が今からこの"スキル"を使うには、ある程度の距離が欲しかった。相手が停止してくれたなら好都合! だから必死でバイクを操って、頬をビームが掠めて、背中に熱を感じる恐怖にあえぎながらも俺は、


「あああああああ!」


 最後のビームをかわしきっって、俺は、

 アニマルバイクを横滑りさせながら停止させた。

 ――女神との距離おおよそ1000メートル1km

 その状態で、女神を見上げる。


「観念しましたか! それとも、一か八か突っ込んでくるつもりですか!」


 先輩は今や、巨大な黄金の女神、聖女になりきって、


「無駄な事、奇跡ごと、女神の光で浄化してやります!」


 そう言って、再びビームを目の前で束ね始めた。

 そんな中で俺は、


 【○○○○】


 最後のお題を浮かべ、そして、

 ――振り返る


1【ヒラケゴマ】 [魔法の呪文]

2【ヤセイ】 [取り戻せ]

3【ツノ】 [オーガニ族のシンボル]

4【キャッチ】 [神様、空から女の子が!]

5【ヤンキー】 [ただ一つの勲章]

6【コン】 [ノジャイナリィのもう一つの可能性]

7【ウソ】 [罪]


 ――問題の答えを導き出した俺は


「【神聖】スキル!」


 女神先輩が放った、


「〈オメガドグマレイ終焉の救済執光〉!」


 極大のビームが目前に迫る中で、

 ――スキル答えを使った

 その瞬間、ビームは、

 ブオォォッォォォン! っと、


「――なっ」


 巻き起こった旋風で、上へ上へと吹き飛ばされた。


「なぁっ!?」


 突風一閃、それで散り散りになったビームは、周囲へと着弾して爆ぜていく、その煙が俺達を覆いつくす。


「ば、バカな! いくら聖女の奇跡であろうと、これだけの物量を――」


 先輩は、戸惑うけど、ビームを吹き飛ばしたのは、

 ――セイカ様のスキル奇跡じゃない


「……な」


 煙が晴れた時、アニマルバイクにまたがった俺達の周りには、


「なんだ、なんだなんだ!?」


 ――大勢の


「なんだその魔物モンスター達はぁ!?」

「モンスターじゃない」


 仲間がいた。


「妖怪だよ」


 【百鬼夜行】スキル SSSランク

 スキル解説[ありとあらゆる妖怪を召喚出来る]


 ――答えの頭文字を繋げてみヒヤツキヤコウれば

 ビームを羽団扇で吹き飛ばした天狗以外にも、ろくろ首、塗り壁、小豆洗い、一つ目入道、


「――さぁ行くぞ」


 多種多様の妖怪達百体を引き連れた俺は、


特攻ぶっこんでくんでよろしく夜露死苦ぅ!」


 女神に向かって、走り出す。

 ――色とりどりの火の玉が

 この道を、黄金でなく、虹の川にしていった。

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