オーガニ族の村の中心にあり、今は、黄金色に輝いている遺跡、それが今、
――崩壊した
「ああああ、遺跡がぁ!?」
「角無しと聖女がいるんだぞコラァッ!?」
砂煙と地響きをたてて崩れていく遺跡、部族の象徴であるものが破壊された事よりも、俺達の心配をしてくれる、頭チリチリのオーガニ族さん達、
――そしてその状況を俺が把握しているのは
「いやおい、空を見ろ!」
「飛んでやがる
セイカ様の【奇跡】スキルで、瞬間移動して抜け出したからだ――このジャングルに来た時みたいに、俺は、セイカ様に抱えられた状態で、ゆっくり下降している。
そして遺跡の砂煙が晴れたと供に、
「な、なんだこのでっかい女神は!?」
「俺達の
巨大な黄金の女神が――それを真似したスライムが――現れるを見た。
そしてスライムは、瓦礫となった遺跡の輝きを吸収していく。
「セイカ様、これって」
「なるほど、遺跡全体を、うっすらスライムが覆ってたんやね」
遺跡の発光の正体はそれか、なんて思っていると、
「――浄化する」
先輩の声と供に、女神の巨体から、
「〈
全方位に向けてスプリンクラーみたいにビームが放たれる!
「うわぁ!?」
「ギャー!?」
「
む、村中へ放たれるビームの雨! なんか威力が増してない? 遺跡表面のスライムも合体したから!?
ビームで荒れる地面に着地した俺達。セイカ様の腕から降りながら、俺は彼女に尋ねた。
「あの、セイカ様の【奇跡】スキルで、スライムはやっつけられますか!?」
「ごめん! うちのスキルは守りとか移動とか補助メインなんよ! それにいくら【奇跡】言うても!」
話している途中で――ビームがまた飛んできた! けれどセイカ様が両手を前にやると、ビームは、まるで俺達を避けるように反れていった。
「こ、こうガン攻めされたら、奇跡が間に合わへん隙が出来るよってに!」
そ、そっか、奇跡を頼るにも限界がある、だったらもう最後の希望は俺の
【穴埋め最終問題】スキル -ランク Lv2
スキル解説[全部漢字で埋めてね!]
【○○○○】 [今日一日を振り返って]
なんでこの状況で問題追加!? 流石にちょっと
とか思っていると、セイカ様が奇跡で弾いたビームが、
ちゅどーん、っと、
「「あっ」」
近くにあった木をへし折って、それが俺達に倒れてきて、
「「ああああ!?」」
早速奇跡が間に合わない状況に、押しつぶされそうになった時、
――何かが俺達の体にぶつかった
「うわっ!?」
「きゃあ!?」
衝撃はあったけど痛みは少ない、そして空中に浮かんだ俺達が落ちた先は、
――
俺は慌ててハンドル代わりの角を握って、セイカ様は俺の腰をぎゅっと掴んだ、走り出す
「この子、レースの時のうちらの
「助けてくれたの!?」
俺達にぶつかって、角で空中へ放り上げて、そのまま背にキャッチした
俺は慌てて
「逃がしません!」
女神スライムが空を飛んで追いかけてくる、ビームの雨を
一見、危機を脱出したかのようにも思えるけれど、
(駄目だ、このまま逃げ続けるだけじゃ)
それこそ、逃げる事だけ考えるなら、セイカ様の【奇跡】スキルで学園まで瞬間移動も出来るかもしれないけど、
そうしたら、
「先輩が爆発してしまう!」
そう、ただ逃げればいいって話じゃない。先輩がスライムに乗っ取られて、心も体もバラバラになってしまう。
そもそも完全に先輩を乗っ取ったスライムが、どれだけ強くなるかも解らない。だから、なんとか倒さないといけないけど、
(【○○○○】を埋める言葉が思いつかない!)
今日一日を振り返ってって何!? 充実しすぎて濃すぎる日だったのは確かだけど! なんにも思いつかない!
(どうすれば……!)
そう、一人じゃどうにもならない事に、
悩む俺は、
「――あっ」
一人じゃない事を、思い出す、そう、
「セ、セイカ様!」
「な、何!?」
友達になろうとした人が、すぐ後ろにいる事を。だから俺は、
「俺のスキルは
――自分の秘密を開示すれば
「……いや、マルマルって
ああ、当然の反応をされる! 相談にのってもらおうと思ったけど厳しい!?
いやともかく説明しないと!
「く、空白に言葉を埋めるスキルなんです、それで今は四つの○を、
「何それ!? 好きなスキル使い放題やん!」
「いやそれが、今はクイズ形式になってて、それでヒントが[今日一日を振り返って]で」
「――振り返る」
セイカ様は、
「今までのスキルも穴埋め問題やったの!?」
「え、はい、今日一日で全部正解出来て」
「振り返るって、それちゃう!?」
「――あっ」
そっか、その可能性はある! 今日どんなスキルを使ったか!
セイカ様に言われた俺は、使った順にスキルを思い出す。
「えっと、【コン】! 【キャッチ】! 【ヤセイ】! 【ツノ】! 【ヤンキー】! 【ヒラケゴマ】! 【ウソ】!」
共通点は全く無い、だけど何か法則性は無いか? 漢字に戻すとか、
――あ、いや待て
解いた順番はバラバラだけど、元々
――あっ
「ああ、そっか!?」
俺は答えにたどり着き、思わず声をあげた。
「解ったん!?」
「はい、セイカ様!」
そう元気よく答えた後、角というアクセルを全開にして、角という
「飛ばしますから、しっかりつかまっていてください!」
「うん!」
そう言って、アクセルを緩めないままに加速する。偽女神との距離を離していく、だけど、
「あれ、ビームが止まった!?」
「なんで!?」
その事を不思議に思って――
「「あっ」」
先輩が、停止した女神が、
「奇跡ごと燃やしてやります!」
その巨大な黄金の腕で、目の前に幾つものビームを束ねていて、そして、
「〈
それを時間差で放ってきた!
「うわぁぁぁぁ!?」
次々と
やられればピンチ、だけど、
「チャンス!」
俺が今からこの"スキル"を使うには、ある程度の距離が欲しかった。相手が停止してくれたなら好都合! だから必死でバイクを操って、頬をビームが掠めて、背中に熱を感じる恐怖にあえぎながらも俺は、
「あああああああ!」
最後のビームをかわしきっって、俺は、
――女神との距離おおよそ
その状態で、女神を見上げる。
「観念しましたか! それとも、一か八か突っ込んでくるつもりですか!」
先輩は今や、巨大な黄金の女神、聖女になりきって、
「無駄な事、奇跡ごと、女神の光で浄化してやります!」
そう言って、再びビームを目の前で束ね始めた。
そんな中で俺は、
【○○○○】
最後のお題を浮かべ、そして、
――振り返る
1【ヒラケゴマ】 [魔法の呪文]
2【ヤセイ】 [取り戻せ]
3【ツノ】 [オーガニ族のシンボル]
4【キャッチ】 [神様、空から女の子が!]
5【ヤンキー】 [ただ一つの勲章]
6【コン】 [ノジャイナリィのもう一つの可能性]
7【ウソ】 [罪]
――問題の答えを導き出した俺は
「【神聖】スキル!」
「〈
極大のビームが目前に迫る中で、
――
その瞬間、ビームは、
ブオォォッォォォン! っと、
「――なっ」
巻き起こった旋風で、上へ上へと吹き飛ばされた。
「なぁっ!?」
突風一閃、それで散り散りになったビームは、周囲へと着弾して爆ぜていく、その煙が俺達を覆いつくす。
「ば、バカな! いくら聖女の奇跡であろうと、これだけの
先輩は、戸惑うけど、ビームを吹き飛ばしたのは、
――セイカ様の
「……な」
煙が晴れた時、
「なんだ、なんだなんだ!?」
――大勢の
「なんだその
「モンスターじゃない」
仲間がいた。
「妖怪だよ」
【百鬼夜行】スキル SSSランク
スキル解説[ありとあらゆる妖怪を召喚出来る]
――答え
ビームを羽団扇で吹き飛ばした天狗以外にも、ろくろ首、塗り壁、小豆洗い、一つ目入道、
「――さぁ行くぞ」
多種多様の
「
女神に向かって、走り出す。
――色とりどりの火の玉が
この道を、黄金でなく、虹の川にしていった。