――
前世の世界、日本での概念、神様は唯一じゃなくて、ありとあらゆる物に宿っているという
そんな
「すごい、すごいすごぉい!?」
俺は、いや俺達は走っていた。
密林地帯、だだっぴろい道、今は色彩豊かな火の玉で"虹の川"を
「まるでお祭り、パレードみたい、ほんにいろんな妖怪がおる!」
あれ、聖女様、なんでこれがモンスターじゃなくて妖怪って知って――あ、そっか、先輩に言った時に聞いたのか。
ともかく、俺がやる事、
妖怪達の力を借りて、
「先輩をスライムから助け出す!」
そう宣言して、1kmの距離を走る俺に、
「や、やめろ、穢れし者達が! 私に――神に盾突くなぁ!」
先輩はそう言って、闇雲にビームを打ってきた、そのうちの一つが俺達にあたろうとするが、
――塗り壁が前に出てきて
「ぐううううう!?」
火が燃え、風が裂く――攻撃を受けた女神の体は、怯みながら小さくなっていく!
「ダメージ通ってるんよ!」
セイカ様の言う通り、宙で態勢を崩す
「舐ぁめるなぁ!」
そう叫んで、一気に空へと上昇していく!
「神は
そう言って、俺達から逃れるように、遥か上へとあがった女神を、
――雷の一撃が貫いた
「ぎゃあああああああああ!?」
"雷神"の起こした雷撃が、上昇をストップさせる、また小さくなった
「【百鬼夜行】スキル!」
とっておきを呼び出す――
「〈ビッ
俺の言葉と供に、俺達の足元に超巨大な大ムカデが出現した、ムカデはゆっくりと体を起こし、そのまま頭を
――ムカデの背を駆け上がる虹光の族達に
「く、来るな、来るな来るな来るな来るなぁっ!」
再びビームが向かってくるが、妖怪達とセイカ様の奇跡が守ってくれた、そして俺達は、ムカデの頭という終着点まで迫った。
「セイカ様、俺はこのまま妖怪を引き連れて
「それくらいの奇跡、朝飯前よ!」
その言葉を残してセイカ様はテレポートした、一人乗りになった
――ムカデの頭の際ギリギリでブレーキをかけた
慣性の法則に従って、バイクから飛び出す体、
「来るなぁぁぁぁぁ!」
俺を狙い撃ちした先輩のビームが向かってくる、だけど、
――背中に、風を受ける
天狗の羽団扇の風が、俺を加速させる! 女神の頭上へたどり着く、
女神の体の中にいる先輩を見下ろしながら、俺は、刀の柄を掴んで、
「――【百鬼夜行】スキル」
そのままに、流星群のように妖怪達を引き連れて、
抜刀する。
――
「〈エイトミ
天狗の風、牛頭馬頭の連携、雪女のつらら、小豆洗いの小豆、
そんなありとあらゆる攻撃と供に放たれた俺の刀の一撃は、スライムを打ち破り、そして、
――そのスライムを
俺と、解放されたゴッドフット先輩の間で、女神の小像へと変化させた。
――その瞬間
時が止まる、
世界がモノクロームになる、
俺と先輩のトラウマが
≪貴方は完璧じゃないと許されないのよ!≫
……自分に嘘を吐くしかなかった俺と、
≪全ては、神の名の下に許される≫
嘘に縋る事を強いられた先輩。
……世界には、優しい嘘がある事だって解っている、だけど、
俺と先輩に必要なのは、嘘とは正反対の物、
そう思った時、
女神の小像の前に、【○○】が浮かぶ、
からっぽな俺の心と、
先輩を満たす言葉は、
とてもシンプルだけど、とても難しい、
――自分に嘘を吐かない生き方
「【真実】」
その言葉を、当てはめた瞬間、
俺と先輩の
――時が流れ出すと供に
女神の像は輝きと供に、何か、二つ折りの紙に変化した。
……ああ、これは、
成績表だ。
オール5って、
それを俺が手に掴んだ途端、妖怪達が消えていった。空には、俺と先輩だけになった。
……俺達は今、
ゆっくりと下降している、
それは地上で、
ゆるりゆるりと落ちていくその途中で、
先輩が呟いた。
「神様、どうして」
子供のように泣きそうな声のその言葉は、
「何故」
先輩の心が、救われていない事を意味していた。
……そりゃそうだ、スライムの所為とはいえ、自分のしていた事がただの自作自演だったのだから。
(かける言葉が見つからない)
そうだ、トラウマは別に、消えた訳じゃない、忘れられるものじゃないのだから
克服は難しくて、付き合い方を変えるくらいしか方法が無くて、
――無言のままに俺達は
セイカ様が待っている地上へと。俺は立って降りたけど、先輩は、その高い背を屈ませながら、尻もちをついて、地面を見下ろしている。
……そんな先輩に、
セイカ様が近寄る。
「もっとはように、大人が君の事を救えたはずなんよ」
セイカ様は、左目を閉じたまま、右目だけを細めて、
「うちが疑問を持つ前に、聖都の偉い人達が気づくべきやったんよ、痕跡がこんな連続で見つかるのはおかしい、何かあるって、疑えるはずやった」
「――疑う」
その言葉に、
「……それは私も同じ事です、女神の痕跡を見つけた時の歓喜に溺れ、これが真実だと疑わなかった」
「結果を出せって、追い詰められてたんちゃう?」
「だとしても私は――」
先輩はそのまま、
「許されない事をしました」
無表情で言葉を零す。
――ああ、まるでからっぽだ
メディと出会う前の、俺みたいだ。
……そんな先輩に、
「――それならうちが、聖都の女王であるうちが罰を下す」
「……はい」
「〔神探しのゴッドフット〕」
セイカ様は言った。
「君はここに残って、遺跡の再建をするまで、オーガニ族と暮らし」
「……え?」
「女神様のおらへん暮らしを、ここで実際に体験しぃ言うてるの」
「し、しかしそんな、村の者達が私を受け入れる事は」
「そこも含めて罰なんよ、まぁ、うちも口添えはするけど、他の土地の女神の偽痕跡も
「――聖女様」
そこでセイカ様は、にこっと笑った。
「女神様を信じる事が悪いんちゃうんよ、大切なのは、色んな生き方、考え方があるのを知る事、沢山の事を知って、その上で、自分の信じる神様を信じなさい」
――セイカ様の言葉を聞いて
「疑う事は悪くないんよ、それは、真実に辿り着く為の手段なんやから」
「……真実」
「大丈夫、ゴッドフット君の信仰は、きっとそこへ辿り着ける」
「――あぁ」
先輩は、
「神様はきっと見てくれてるよ」
泣き始めた。
「あぁぁぁぁぁぁっ!」
声をあげて、空を仰ぎながら、子供のように泣き叫ぶゴッドフット先輩。
……この日のために用意されていたかのような、スキルの穴埋めの問題。
セイントセイカ様に出会う為に用意した物かと思ってたけど、もしかしたら、
「女神様、聖女様、……セイカ様、ああ、あぁ」
――先輩を救う為の物だったのかな
……わかんないけど、とりあえず、
(――良かった)
急な安心感が湧き上がってきて、そしてそれは、
疲労感と、激しい睡魔を、セットで呼び起こしてきて、
「――あっ」
スイッチが切れたように倒れる体を、
「おっと」
支えてくれたのは――セイカ様で、
「また後で、アル君」
俺を労わる声を聞いた俺は、嘘を吐いていない、本当の成績表を掴んだまま、
そのまま、セイカ様の腕の中で、意識を失った。