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5-end おかえりって、言える場所が有る

 ――目覚めた俺の視界に映ったのは天井じゃなく


「――ご主人様」


 俺の顔を覗き込んでいた、メディだった。

 えっと、ここは、俺達の下宿? 俺の部屋のベッドで、寝かされていたのか。

 ちょっと目を横にやると、部屋の棚に、写真と賞状の隣に、成績表が飾られていた。メディがディスプレイしてくれたんだろうか。


「お目覚めになられて、良かったです」

「え、あ、うん」


 とりあえず俺は、パジャマ姿の身を起こして、メディに尋ねる。


「あの、俺、どれだけ寝てたの?」

「セイカ様とスライム退治をしに行ってから、丸二日になります」

「ふ、二日……」


 そんなに寝てたんだ。……でもよく考えたら、一日中色んなスキルを使って、最後の最後にとんでもないスキル四字熟語まで使った訳だし。


(心が壊れるギリギリだったのかもしれない)


 まぁ多分、そうならないようにセイラ様が調整してくれたとは思うけど。

 そして俺が、今このベッドで寝ている理由は多分、


「セイカ様が、俺を届けてくれたのかな」

「はい」

「えっと、セイカ様から、どれくらい聞いてる?」

「ご主人様が、セイカ様と戦い、スライムに乗っ取られたゴッドフット様を救ったと」

「そ、そっか、あの、心の中の話は」

「心の中?」

「あ、いや、なんでもない!」


 うん、この反応リアクションだと、俺が異世界転生者だって事は教えてないみたい。流石にそこは秘密にしてくれるか。

 ……そういえば、もう一つ気になる事、


「ゴッドフット先輩は、どうなった?」


 聖女であるセイカ様が直々に罰を下しはしたけど――この学園での扱いは、


「女神の痕跡の捏造の罪で、退学処分になりました」

「……そっか」

「今回の件で、所属されていた聖騎士団はもちろん、Sクラスの評判も下がっておりまして」


 解っていた事だけど、やっぱり、聞くとつらい。

 ゴッドフット先輩に責任はある、だけど、周りから結果を出さなきゃいけないと、追い詰められていたのを知ってる俺としては……。


「……余り、いい気味だとは思えませんよね」

「うん……」


 ゴッドフット先輩は、スネークウィップ先輩みたいな、解りやすい悪スカッとざまぁじゃない。

 ゴッドフット先輩のした事は他人事じゃない、誰だって同じような過ちを犯す危険性がある。

 ただ、だからといって、非難をするなとも言えない。

 悪い事をしたのは間違いないのだから。

 ……先輩がもう一度、立ち上がる為には、色々と障害はあると思う。


「――でも」


 それでも、そんな状況でも、


「それでも先輩は、真実に辿り着くよ」

「真実、ですか?」

「うん」


 俺は、笑顔を浮かべて言った。


「自分の心に、嘘を吐かずに生きていけるようになる」


 俺の言葉に、


「――それは、素敵な事ですね」


 何かを察したのか、メディも笑みを浮かべてくれた。


「えっと、そろそろ起きるよ! おなかは、空いてる気がするから、何か作ってくれたら嬉し――」


 そう言ってベッドから出ようとした俺だったが、

 ――それをメディが手で制す


「メディ?」

「メイド長から教わりました、主従は離れている時こそ、真価が試されるものなのだと」


 メディは俺の顔をみつめたまま、


「セイカ様との旅で、ご主人様は、また成長されたと思います」


 笑いながら、


「だけど私は未熟だから、ご主人様が目覚めるまで、とても――とてもとても不安でした。だからどうかこの言葉を送らせてください」


 言った。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


 ……ああ、この声と、笑顔を見るだけで、

 俺の心が暖かくなる気がする。

 だから俺は、同じように笑みを浮かべて、


「ただいま、メディ」


 と、言った。

 ……しばらく、笑顔のままみつめあっていたが、


「……な、なんか、照れますね、改めますと」

「そ、そうだね、うん」

「あ、そうだ、セイカ様からスキルがレベルアップしたと聞きましたが!」

「あ、そうだった!」


 俺は慌てて、ステータス画面を開き、スキルのメニューを展開すれば、


 【○○】スキル -ランク レベル3

 スキル解説[     ]

 レベルアップ特典1[一度使ったスキルの再使用(Dランクまで]

 レベルアップ特典2[お題に混ぜる字を漢字にする]

 レベルアップ特典3[発想力を伸ばす為、お題は一週間固定]


「――漢字が使えるって!」

「あ、ひらがなカタカナから卒業ですか?」

「そうそう! お題に混じるみたい、あれ、でも一週間固定ってどういう事だろ?」

「それは、例えば聖という字が混ざるお題が出たら、それだけが出続けるとか?」

「それって【○聖】なら、【剣聖】でも【炎聖】でも【神聖】でも使い放題って事!?」

「ええ、でも結局は、何の漢字が混ざるかにもよるかと」

「確かに、でも前より使いやすそう、あとDランクまでのスキルを再使用っていうのも地味に嬉しい」

「ええ、これは確かに、レベルアップです!」


 メディが喜ぶと、俺も嬉しくなって――そしたら急におなかがぐうって鳴った。空腹を覚えている、その事に、ちょっとした感動を覚える俺に、メディは笑い、直ぐに食事を用意しますと言ってくれた。


「まずは着替えの方を、今日はもう学園に通う必要はないので、部屋着の方をお召しに」


 そう言って部屋を出ていったメディ、俺は彼女の言う通りに、ラフな格好に着替える。姿見の前で、簡単に髪を整えて、……よく考えたら二日間お風呂に入ってない事に気づき、先にシャワーでも浴びておくべきだったかと思いながらも、一先ず部屋を出て、それで、


「……メディ?」


 メディが、手紙を読んで固まっているのを見た。


「どうしたの? なんの手紙?」

「――招待状です」

「招待状って、誰から?」


 まさか、皇帝エンリ様? それとも聖女のセイカ様?

 ――大和のサクラ様って女王様は

 いや、流石にそれは無いか。そもそもそんな偉い人じゃなくて、クラスメイトの誰かからもしれないし、そう思ってると、


「――森王しんおうエルフリダ様です」


 ……エルフリダ? あれ、どっかで聞いた気が、

 ――あっ


「エルフリダって、エルフの王様の!?」


 これ、先生の授業しんけんなんとかでやったところだ!?


「は、はい、名君にして暴君と噂される王が、週末の連休に、私達をお呼びしてます!」

「呼ぶって、どこに!」

「海を泳ぐ楽園、タートルリゾートです!」

「なんの為に!?」

「そ、そこまでは書いてありませんが――」


 そこでメディ、ちょっと考えた後、


「この誘いは、断れませんね」

「そ、そうだね」


 この世界の超VIPの人の、直接指名だ、下手に逆らったらどうなるか解ったものじゃない。

 一体、エルフの王様は、リゾートに俺達を呼んで、何をさせるつもりなんだろう。

 ともかく、俺のスキルが重要になってくるのは間違いない、そろそろお題が出てきてる頃だろうと思って、俺は改めてステータス画面を開いて、

 ――固まった


「――無理、絶対無理」

「ご、ご主人様?」

「こんな文字で、スキルで、一週間も無理だってばぁ!?」

「一体どんなお題なのですか!?」


 俺が嘆く漢字一文字、それは――






 【○餅】スキル -ランク Lv3

 スキル解説[一日一回使ってね♪]


 アルズハート

 [【笑顔】【賞賛】【真実】【○○】【○○】【○○】【○○】]

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