――目覚めた俺の視界に映ったのは天井じゃなく
「――ご主人様」
俺の顔を覗き込んでいた、メディだった。
えっと、ここは、俺達の下宿? 俺の部屋のベッドで、寝かされていたのか。
ちょっと目を横にやると、部屋の棚に、写真と賞状の隣に、成績表が飾られていた。メディがディスプレイしてくれたんだろうか。
「お目覚めになられて、良かったです」
「え、あ、うん」
とりあえず俺は、パジャマ姿の身を起こして、メディに尋ねる。
「あの、俺、どれだけ寝てたの?」
「セイカ様とスライム退治をしに行ってから、丸二日になります」
「ふ、二日……」
そんなに寝てたんだ。……でもよく考えたら、一日中色んなスキルを使って、最後の最後に
(心が壊れるギリギリだったのかもしれない)
まぁ多分、そうならないようにセイラ様が調整してくれたとは思うけど。
そして俺が、今このベッドで寝ている理由は多分、
「セイカ様が、俺を届けてくれたのかな」
「はい」
「えっと、セイカ様から、どれくらい聞いてる?」
「ご主人様が、セイカ様と戦い、スライムに乗っ取られたゴッドフット様を救ったと」
「そ、そっか、あの、心の中の話は」
「心の中?」
「あ、いや、なんでもない!」
うん、この
……そういえば、もう一つ気になる事、
「ゴッドフット先輩は、どうなった?」
聖女であるセイカ様が直々に罰を下しはしたけど――この学園での扱いは、
「女神の痕跡の捏造の罪で、退学処分になりました」
「……そっか」
「今回の件で、所属されていた聖騎士団はもちろん、Sクラスの評判も下がっておりまして」
解っていた事だけど、やっぱり、聞くとつらい。
ゴッドフット先輩に責任はある、だけど、周りから結果を出さなきゃいけないと、追い詰められていたのを知ってる俺としては……。
「……余り、いい気味だとは思えませんよね」
「うん……」
ゴッドフット先輩は、スネークウィップ先輩みたいな、
ゴッドフット先輩のした事は他人事じゃない、誰だって同じような過ちを犯す危険性がある。
ただ、だからといって、非難をするなとも言えない。
悪い事をしたのは間違いないのだから。
……先輩がもう一度、立ち上がる為には、色々と障害はあると思う。
「――でも」
それでも、そんな状況でも、
「それでも先輩は、真実に辿り着くよ」
「真実、ですか?」
「うん」
俺は、笑顔を浮かべて言った。
「自分の心に、嘘を吐かずに生きていけるようになる」
俺の言葉に、
「――それは、素敵な事ですね」
何かを察したのか、メディも笑みを浮かべてくれた。
「えっと、そろそろ起きるよ! おなかは、空いてる気がするから、何か作ってくれたら嬉し――」
そう言ってベッドから出ようとした俺だったが、
――それをメディが手で制す
「メディ?」
「メイド長から教わりました、主従は離れている時こそ、真価が試されるものなのだと」
メディは俺の顔をみつめたまま、
「セイカ様との旅で、ご主人様は、また成長されたと思います」
笑いながら、
「だけど私は未熟だから、ご主人様が目覚めるまで、とても――とてもとても不安でした。だからどうかこの言葉を送らせてください」
言った。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
……ああ、この声と、笑顔を見るだけで、
俺の心が暖かくなる気がする。
だから俺は、同じように笑みを浮かべて、
「ただいま、メディ」
と、言った。
……しばらく、笑顔のままみつめあっていたが、
「……な、なんか、照れますね、改めますと」
「そ、そうだね、うん」
「あ、そうだ、セイカ様からスキルがレベルアップしたと聞きましたが!」
「あ、そうだった!」
俺は慌てて、ステータス画面を開き、スキルのメニューを展開すれば、
【○○】スキル -ランク レベル3
スキル解説[ ]
レベルアップ特典1[一度使ったスキルの再使用(Dランクまで]
レベルアップ特典2[お題に混ぜる字を漢字にする]
レベルアップ特典3[発想力を伸ばす為、お題は一週間固定]
「――漢字が使えるって!」
「あ、ひらがなカタカナから卒業ですか?」
「そうそう! お題に混じるみたい、あれ、でも一週間固定ってどういう事だろ?」
「それは、例えば聖という字が混ざるお題が出たら、それだけが出続けるとか?」
「それって【○聖】なら、【剣聖】でも【炎聖】でも【神聖】でも使い放題って事!?」
「ええ、でも結局は、何の漢字が混ざるかにもよるかと」
「確かに、でも前より使いやすそう、あとDランクまでのスキルを再使用っていうのも地味に嬉しい」
「ええ、これは確かに、レベルアップです!」
メディが喜ぶと、俺も嬉しくなって――そしたら急におなかがぐうって鳴った。空腹を覚えている、その事に、ちょっとした感動を覚える俺に、メディは笑い、直ぐに食事を用意しますと言ってくれた。
「まずは着替えの方を、今日はもう学園に通う必要はないので、部屋着の方をお召しに」
そう言って部屋を出ていったメディ、俺は彼女の言う通りに、ラフな格好に着替える。姿見の前で、簡単に髪を整えて、……よく考えたら二日間お風呂に入ってない事に気づき、先にシャワーでも浴びておくべきだったかと思いながらも、一先ず部屋を出て、それで、
「……メディ?」
メディが、手紙を読んで固まっているのを見た。
「どうしたの? なんの手紙?」
「――招待状です」
「招待状って、誰から?」
まさか、皇帝エンリ様? それとも聖女のセイカ様?
――大和のサクラ様って女王様は
いや、流石にそれは無いか。そもそもそんな偉い人じゃなくて、クラスメイトの誰かからもしれないし、そう思ってると、
「――
……エルフリダ? あれ、どっかで聞いた気が、
――あっ
「エルフリダって、エルフの王様の!?」
これ、
「は、はい、名君にして暴君と噂される王が、週末の連休に、私達をお呼びしてます!」
「呼ぶって、どこに!」
「海を泳ぐ楽園、タートルリゾートです!」
「なんの為に!?」
「そ、そこまでは書いてありませんが――」
そこでメディ、ちょっと考えた後、
「この誘いは、断れませんね」
「そ、そうだね」
この世界の超VIPの人の、直接指名だ、下手に逆らったらどうなるか解ったものじゃない。
一体、エルフの王様は、リゾートに俺達を呼んで、何をさせるつもりなんだろう。
ともかく、俺のスキルが重要になってくるのは間違いない、そろそろお題が出てきてる頃だろうと思って、俺は改めてステータス画面を開いて、
――固まった
「――無理、絶対無理」
「ご、ご主人様?」
「こんな文字で、スキルで、一週間も無理だってばぁ!?」
「一体どんなお題なのですか!?」
俺が嘆く漢字一文字、それは――
【○餅】スキル -ランク Lv3
スキル解説[一日一回使ってね♪]
アルズハート
[【笑顔】【賞賛】【真実】【○○】【○○】【○○】【○○】]