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6-end グッドニュースバッドニュース

 Fクラス皆での、タートルリゾート1泊2日旅行から一週間が経った。

 つまり今は、明日からの学園に備えて、色々と準備している休日の夜。下宿の食卓で、今、俺がしている事は、


「た、食べきったぁ……」

「お疲れ様です、ご主人様」


 今週のスキルの使用、そして消費である。改めて、ここ一ヶ月のスキルお題の移り変わりを振り返った。


 1週目 【○餅】

 2週目 【○米】

 3週目 【○麺】


 と、食べ物が続き、4週目、つまり今週のお題は、


 【○粉】


 だった。……いや2週目も3週目もキツかったけど! 2週目の【○米】は米俵をモンスターにぶん投げたり、3週目の【○麺】スキルは、クモのヒーローみたいに使えたりはした!

 でも、粉は、粉はさぁ、ほとんど食べるしかなか7日中6日分ったんだ……。


「なんでこんなに主食っぽいもの続くかなぁ……」


 と、俺は、【サモ粉】トウモロコシ粉で作ったトルティーヤで包んだ、大量のタコスが腹におさまっている状況に、苦しげな息を吐く。いや、鮫の時みたく、食べる以外で使えれば一番いいんだけどね、毎日がバトるような状況って、学園に通ってたって簡単には訪れない。実際粉塵爆破をやったくらい。

 食べきれないと、次のスキルお題が解放されない。

 食は必ずしも幸福を生まない、を、身を以て――腹を以て知る。


「ひ、ひとまず、ご主人様、次のスキルのお題を確認を致しましょう」

「そうだね……」


 レベルアップして、漢字一文字固定って条件を聞いた時は、無邪気に喜んだけどさ、実際はレベルアップ前の方が縛りがゆるかった気がする。

 とりあえずステータス画面を開いて、スキルの項目を選んでと、

 ああ、今まで通り、明日からのお題が予告されている。次はどんな食べ物なんだろう――


 【○聖】


 ……え?


「……ご主人様?」


 メディが話しかけてきたけど、俺はそれに返事が出来ない。完全に、頭がフリーズしている。

 もう一度、念の為に、明日から使えるお題をチェックする、

 ――スキルの説明欄にあったのは


 【○聖】スキル Sランク

 スキル解説[何回でも可]


「うわぁぁぁ!?」

「ご、ご主人様、どうされました!?」

「お、お題が、聖だ! 【○聖】まるせいなんだ!」

「せ、セイって、"聖"女様のセイですか!?」

「そのセイ!」


 俺は驚くし、メディも驚く。そりゃそうだよ! また食べ物系の無理ゲーかと思ったら――それこそ俺がレベル3になった時に想像した――【○聖】スキルの使い放題!


「しかも一日何回でもOKだって!」

「何回も!?」


 どうしたのこのセイラ様の大判振る舞い!? 俺の心の中で、なんかいい事全コース制覇とかあった!?


「お、お喜びの所申し訳ありません! メイド長に教わりました、大いなるスキルには大いなる責任がどうとかこうとか!」

「あ、それ、俺も前世に聞いた事があるような気がする!」

「ですが大事な大事な機会アタックチャンスなのは確かです、どうでしょう、経験と功績を得る為に、冒険者ギルドの高難度クエを受けるなどは」

「ああうん、あとそれと、なんの【○聖】を使うかも、しっかり考えなきゃ」


 興奮と戸惑い、そして、その中にある確かな喜び、


「ご主人様、これはきっとご主人様のスキルを、レベルアップさせるチャンスです」

「うん、俺もそんな気がする!」

「どうか私にそのお手伝いを、ああ、私も気持ちが昂ぶります!」


 今までの俺のスキルは――何でも有りかに見えて、実際は制限、縛りが多かった。だけど今度の一週間はそうじゃない。

 これがセイラ様の、何か意図あってのお題なのか、それとも気まぐれなのか、

 ――そこは重要じゃない


(問題はこのチャンスを、自分の意思で活かす事)


 俺はセイラ様の為にじゃなくて、自分の為に、そして、

 メディや、Fクラスの皆のために、このスキルを使う。


「よろしく、メディ」

「はい!」


 そう俺達が、決意を新たにした時、

 ――突然


「お兄ちゃぁぁぁん!」


 俺を呼び叫ぶ声と共に、

 ――ドガァァァァッ! っと、

 玄関のドアが! 燃えて壊されてテーブルまで吹っ飛んできた!?


「え、ええ!?」


 無くなったドアの向こうには、ドアを叩き壊したであろう、燃えるハンマーを持ったフィアルダが、

 ――涙を流しながら俺達を見ていて


「え、ど、どうしたフィア!?」

「何事ですか!?」


 フィアの余りの様子に――頭に乗せたチビドラゴンも悲しそうにピキャー!って泣く様子に――俺達はドアを壊された事よりも、フィアを心配して声をかけたが、

 次の瞬間、


「――お姉様が」


 もたらされた言葉に、


「死んだ」


 俺とメディの、さっきまでの喜びは吹き飛び、そして、


「お姉様が、スライムに殺された!」


 俺のからっぽの心を、冷たいもので満たしていった。






 【○聖】スキル Sランク Lv3

 スキル解説[一日何回でもOK]


 アルズハート

 [【笑顔】【賞賛】【真実】【○○】【○○】【○○】【○○】]

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