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8-7 セイラのゲームコレクション

 帝国歴1041年7月5日 未明

 ???


 俺は、〔何も無しのアルテナッシ〕、

 俺は今、俺自身のの中に居る。

 そして俺の心の中真っ白な空間では現在、


「よぉし、ここでシマウマにへんしんなの!」

「セイラ様!」

「やっぱりみるものすべてこわせるのソーカイなの!」

「セイラ様!」

「おんなのこのウタもさいこうなのー!」

「セイラ様ぁ!」


 この異世界の神であり、魔法に代わってスキルを世界中の人達に与えた女神、セイントセイラ様がひとりっきりでゲームをしてたので、俺はともかく名前を大声で叫んでいて、


「あれ、おにいちゃんだ!」


 よ、ようやく気づいてくれた……、夢の中なのに体が疲れる。

 ――エンリ様を弁護することの約束をしたの日の夜

 ドラゴンタクシーでベランダに降り立てば、その入り口にフィアからの置き手紙があり、現場検証はアンナさん達がビャッコと一緒にすすめていることを知った。そのあと俺は、メディと一緒に、"いかに【○○○○】を裁判に有利なスキルにするか?"について話し合ったけど、答えが出るまでに眠気が来てしまい、先に寝ることにした。

 すると何故か、スライムを倒した訳でもないのに、セイラ様が目の前にいた訳で。


「ひさしぶり、おにいちゃん!」

「は、はい、ひさしぶりです、……あの、テンラ転生の女神様は?」


 一応、念の為、今ここにいない女神様について尋ねれば、


「"セイカちゃん"からきいてない? いそがしくなるからしばらくあえないんだって!」


 と、答えてくれた。


(セイントセイカ様の言ったとおりか)


 疑ってた訳じゃないけど、一方的に言われたことだから、ちょっと確認をしたかった。


「その、なんで忙しくなるかとか言ってました?」

「う~ん、なんかたたかわなきゃいけないとかなんとか」

「戦う……?」

「うん! ゲームしにいったのかも!」

「はぁ……」


 まぁとりあえず、状況を確認できてよかった。……それに、

 ――今、セイラ様に会えたのをただの偶然にしてはいけない


「あの、セイラ様、俺、困ってるんです!」


 そう、俺は明日、裁判に勝つためにしなきゃいけないこととして、


「いい【○○○○】四字熟語が思いつかなくて……!」


 四つの○を埋めなければならなかった。


「色々考えたんですけど、【最強弁護】とか【真実究明】とか、なんかどうもしっくりこなくて……!」


 そう、俺のスキルは、"俺が納得したもの"じゃないと使えないのは、今までで経験済みだ。あそこまでエンリ様に啖呵を切ったのに、実際は、このていたらく。


「き、きっと、こうやってまた夢の中で会えたのも、俺が望んだからだと思います、もしくはその逆で、セイラ様が俺を助けてくれようとしたから!」


 そう、溺れる者は藁をも掴むし、悩む俺は神にも頼る、それがどれだけゲーム好きの子供の姿をしていても、実際は1059歳のスキルの女神様なのだから、きっと、いい知恵四字熟語を授けてくれるはず!

 そんな感じで頼み込む俺に、セイラ様は、にこっと笑って、


「おにいちゃん!」

「はい!」

「ゲームしよー!」

「セイラ様!?」


 俺の望まないことを言い出した。セイラ様、ゴリランゴのゲームをオートセーブして、ホームボタンを押してDLしたソフトを選びはじめて、


「あのセイラ様、俺、遊んでいる暇はなくて!」


 そう、訴えかけた俺だけど、


「――えっ」


 その時、テレビ画面に映ったのは、

 ――セイラ様が選んだゲームタイトル

 それは、その文字は、


「これって!」


 紛れもない、望んだとおりの四字熟語。






 帝国歴1041年7月5日7時30分

 下宿のアルテナッシの部屋


 ……うっ、ううん、

 ――あっ


「……朝、か」


 夢の中で、文字通りの夜通し、ゲームをプレイした俺。けれど眠気なんてものは全く無い。ちゃんと、寝た感じになっている。

 俺はベッドから身を起こして、ブレザーの制服にきちんと着替え、腰に、刀をしっかりと下げる。

 そうしてから扉を開けば、


「おはようございます、ご主人様」


 メディが、すっかり朝食の準備を整えてくれていた。


「裁判は本日の10時から、なんとかそれまでに、【○○○○】中身を決めないと」

「もう決まったよ」

「え――ほ、本当でございますか!」

「うん」


 俺は、メニュー欄を開き、そこからスキルの項目を展開する。


【○○○○】


 そして、四つ並ぶ空白に、俺はセイラ様が教えてくれた神の言葉天啓を、

 ――入力する

 ……、

 何も起きない、状況で、

 ――メディが口を開く


メディ

「あの、ご主人様、一体なにを。」

「――あれ?」


メディ

「え、え、これは・・・・!?」


アル

「よし、うまくスキルが発動してる!」


メディ

「あ、あの、ご主人様と、私のセリフが!」


アル

「そう!」

「"吹き出し"におさまっている。」


メディ

「ええええええええ!?」


アル

(――アドベンチャーゲーム)

(セリフが全てテキスト化されて、半透明の箱に覆われている。)


アル

(メディの驚いた声も、メッセージウィンドウに表示されてる。)

(昨日、セイラ様とプレイしたものそのままだ。)


メディ

「わ、私とご主人様の声が、文章に!」

「こ、これは一体、どういうスキルなのですか!?」


アル

「あ、詳しい説明はあとでするから。」

「メディ、そのチラシを貸してくれる?」


メディ

「き、昨日の落語会のチラシ、アカネ様のイラストと」

「落語のプログラムが書かれたものですね。」


メディ

「これを、どうされるのですか?」


アル

「ええと、あ、あったあった。」


メディ

「・・・・ご主人様、そのポケットから、取り出したものは?」

「ボタンが沢山付いた板の、真ん中に、絵?」


アル

(俺が今、手にもっているもの、それは)

(――携帯ゲーム機)


アル

(ゲーム事態で遊んだことない俺だけど)

(多分、ものすごく古い、レトロなハードの奴だ。)


アル

(でも、どう説明しよう? 携帯ゲーム機なんて、)

(この世界じゃオーバーテクノロジーだもんな。)


メディ

「ご主人様?」


アル

「え、えっと、スキルの、《アレ》だよ。」


メディ

「ス、スキルの、《アレ》ですか。」


アル

「そう、スキルの《アレ》。」


アル

(こう誤魔化すしかないか。)


アル

(・・・・えっと、()内の、俺の心の中の声。)

(さ、さすがにこれは、メディに聞こえてないよな。)


メディ

「ご主人様?」


アル

「と、とりあえず!」

「チラシにこうやって、《アレ》を翳してと。」


証拠物チラシの情報を

裁判記録にセーブした。


メディ

「裁判記録にセーブ!?」

「え、こ、この浮かび上がった文言は、一体!?」


アル

「裁判記録はRボタンでいつでもチェックできるはず。」

「よし、ポチッと。」


[チラシ]

落語のプログラムが書かれているチラシ。

時そば まんじゅうこわい 中入り 死に神

と、演目の順番が書かれている。


メディ

「――これは。チラシが」

「証拠物として、《アレ》の中にまとめられています!」


アル

「よかった、メディとも共有できるみたいだ。」


メディ

「・・・・メイド長から教わりました。」

「裁判では、証拠物が全てを語ると。」


アル

「それ、メイド長じゃなくて、裁判長の言葉じゃ。」


メディ

「証拠物を、手元にコンパクトに整理出来る!」

「このスキルは、その点において、とても有用です!」


メディ

「・・・・なぜ、私達の声が、文字になるかはわかりませんが!」


アル

「ともかく、裁判開始まであと3時間。」

「それまでに、少しでも多くの情報を集めよう。」


メディ

「よ、よくわかりませんが、なんかわかりました!」

「参りましょう、ご主人様!」


アル

「うん!」


アル

(待っててくれ、エンペリラ様。)

(必ず、君の無実を――そして。)


アル

(サクラさんへの愛を、証明してみせるから!)

(このスキル――)


アル

(【逆境裁判】で!)






          ツヅク

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