帝国歴1041年7月5日
摂政機関裁判所 第一法廷
[証言スタート!]
=中入りがダンスだったのを知ってた理由=
ビャッコ
「じ、実は、扉のそばにずっといたというのは、嘘でござる。」
「拙者、アカネ殿の落語の大ファンでござって。」
ビャッコ
「なので警備をサボって、トイレで【忍者】スキルで一般人に変装。」
「観客席で、落語を見ていたのでござるよ。」
ビャッコ
「満足してから帰った瞬間、部屋から人を殴る音が!」
「踏み込んだ時、凶器をもったエンリ殿がいたでござる!」
[証言ここ迄]
アル
「へ、変装して、観客席にいた?」
ビャッコ
「その通りでござる! ご覧あれ!」
「【忍者】スキル、〈
アル
「うわ!?」
(ビャ、ビャッコさんが煙に包まれて、出てきたのは)
サイバンチョ
「え、えぇ!?」
「アル君!?」
メディ
「ご主人様に、そっくり!?」
アル?
「ニーンニンニンニンニン!」
「驚いたでござるか! ・・・・変身解除!」
アル
(あ、も、元に戻った・・・・)
ビャッコ
「ご覧のように、拙者の変化の術はパーフェクト」
「男でも女でも動物でも、なんでもござれでござる!」
ゲンブ
「それで貴殿は、客に化けて落語を見ていたと。」
ビャッコ
「そうでござるよ~。」
「いや~、アカネ殿の落語は最高でござった!」
アル
(劇場でスキルが使えたのは、エンリ様と警備のビャッコさんとゲンブさん。)
(確かに、このスキルがあれば、客席に紛れることは可能だったか。)
アル
「・・・・そういえば、凶器の話が出ていましたが。」
「それ、まだ、証拠物として提出されてませんよね?」
ゲンブ
「ふむ。」
「出すのが少し憚れるが、よろしいか裁判長?」
サイバンチョ
「どういうこと? とりあえず、出してもらわんと。」
ゲンブ
「では、失礼して、こちらである。」
アル
「えっ。」
アル
(こ、これは・・・・)
サイバンチョ
「こ、これは、真っ赤な花やね。」
「・・・・花どころか、茎まで真っ赤や。」
アル
「も、もしかして、この赤って。」
ゲンブ
「――セイリュウ様の返り血である。」
アル
(な、なにいいいいい!?)
ザワザワザワザワ・・・・
ボウチョウニン
「う、嘘、生々しい。」
ボウチョウニン
「あんな血が出るほど、叩かれたってこと?」
ボウチョウニン
「よほど恨みがある者の犯行じゃ・・・・」
カンッ!
サイバンチョ
「せ、静粛に! 静かにするんよ!」
「た、確かにこれは、出すのちょっと躊躇するね。」
ゲンブ
「指紋もある関係上、洗うわけにもいかなかったのでな。」
メディ
「その指紋は、まさか――」
ゲンブ
「無論、エンリ殿のもの。」
「それだけしか、残っていない。」
アル
(やっぱり・・・・)
裁判記録にセーブした。
[花の置物]
太めの茎に、小さな花が沢山。
セイリュウの血で真っ赤に染まっている。
指紋はエンリのもののみ検出。
ザワザワザワザワ・・・・
ボウチョウニン
「あの花の置物、皇帝から姫様へのプレゼントなんだよね?」
ボウチョウニン
「受け取り拒否されたから、それで殴っちゃったの?」
ボウチョウニン
「指紋が一つだけって、もう決定的じゃん。」
アル
(や、やばい、ますます、法廷がアウェイな雰囲気に。)
ビャッコ
「ご覧の通りでござる、帝国の民よ!」
「この血の紅こそが、皇帝の逃れられぬ罪の証!」
ビャッコ
「――最早、潔く認められたらどうか。」
「そうでござろう、エンリ殿!」
エンリ
「っ!」
アル
(っ!)
(ビャ、ビャッコさん、控え席のエンリ様に、声をかけはじめた。)
エンリ
「ち、違います、僕は。」
ビャッコ
「先ほど、何やらべらべらと喋っていたでござるが」
「――それはエンリ殿が、そう思い込んでるだけでは?」
エンリ
「え?」
ビャッコ
「自分が、セイリュウ様を殺した。」
「受け入れられない現実と、折り合いをつける為、自身に嘘を吐いたのでは?」
エンリ
「そ、そんな、そんなことありません!」
「僕は、僕は!」
アル
(や、やばい、エンリ様が正体を失っている!)
異議あり!
アル
「ビャッコさん! あなたの相手は、エンリ様じゃありません!」
「弁護士の俺です!」
ビャッコ
「はぁ、尋問って奴でござるか?」
「拙者のパーフェクトな証言に、どんなケチをつけるんだか。」
カンッ!
サイバンチョ
「――アル君、尋問を。」
アル
「は、はい」
エンリ
「ぼ、僕が、自分に嘘、そんな・・・・」
ボウチョウニン
「お、おい、エンリ様、パニくり過ぎじゃない?」
ボウチョウニン
「本当に、自分に嘘を吐いていたとか?」
ボウチョウニン
「だったらもっと――迷えばいい。」
アル
(や、やばい、思った以上に、メンタルがやられている。)
(傍聴席もさっきから、ざわつきっぱなしだ)
アル
(・・・・でも、ともかく今は、ビャッコさんの証言を崩さないと。)
メディ
「ご、ご主人様、今の証言に《矛盾》はありますか?」
アル
「・・・・《矛盾》というか、気になる部分がある。」
メディ
「それならそこを――」
「Lボタンで、よくきくのですね!」
アル
「ああ!」
アル
(勝ち誇ってる顔をしてるけど、絶対に逃さない。)
(必ず、切り崩すんだ!)
[尋問スタート!]
=中入りがダンスだったのを知ってた理由=
ビャッコ
「満足してから帰った瞬間、部屋から人を殴る音が!」
「踏み込んだ時、凶器をもったエンリ殿がいたでござる!」
→よくきく
待った!
アル
「なんで帰ったんですか?」
ビャッコ
「え? そ、それは言った通りでござる。」
「満足したから、警護に戻っただけでござる。」
裁判官
「アルくんどうしたん?」
「気になることでもあるん?」
アル
「はい、今の証言は――」
→ 気になる
気にならない
バン!
アル
「・・・・証人は昨日、観客席の入り口に、突然、乱入しました。」
「セイリュウ様がエンリ様に、殺されたと。」
アル
「その時、死に神はちょうど、オチに入るところでした。」
「つまりビャッコさんは、その前にVIPルームへ戻っています。」
ビャッコ
「あっ」
アル
「蝋燭の火が消えるところは、死に神のクライマックスです!」
「落語好きならそれを見ずに警護に戻るなんて、有り得ない!」
ビャッコ
「に、ににに」
「ニニンがシシンでぇん!?」
アル
「このことから、あなたが変装して」
「観客席にいたというのは全く通らない!」
アル
「嘘を吐いてるのは、エンリ様じゃなくて」
「ビャッコさんの方になる!」
異議ありっ
ゲンブ
「しかし、ビャッコは確かに中入りをダンスだと知っている。」
「それならば、どこからそれを見ていたのか。」
サイバンチョ
「せやねぇ、アル君。」
「それを弁護側は立証できる?」
アル
(・・・・そんなのはもう、決まっている。)
(そして!)
アル
(それこそが、この事件の真相へと導く線になる!)
バンッ!
アル
「ビャッコさんが、ダンスショーを見た場所は――」
観客席
VIPルーム
舞台袖
ツヅク