「…………貴方達の旅は、ここでお終いです。楽しかったですよ。クレイ」
ゼロファの白い髪が、さらりと肩を流れる。お人好しそうな緑色の瞳は健在だ。
ただその行動は、裏切りそのものだ。
「なんでだよ、どうして、お前が…………!」
「貴方達は頑張った。よくここまで辿り着きました。でも生憎今は、僕が留守番役なんですよ」
古城の大扉。――2つの蛇の彫刻が目を引く。
白い髪の青年はその彫刻を見上げて、いつもと変わらない優しい笑顔を浮かべている。
足元に横たわるのは、さっきまで元気だった、魔女探しの仲間達だ。
「お前……魔女の、手下、だったのか……」
ず、と石畳が黒い沼にかわり、体が沈んでいく。
クレイは慌てて足を抜こうとするが、沈み込みは止まらない。
血まみれで倒れていた仲間の姿も、あっというまに泥沼の中に消えていった。
「――くそ!!」
「お元気で。クレイ。……メルド湖沼地帯から、脱出できるなら」
「……! く……必ず、もう一度……!!」
叫んだ声も、黒い泥沼に沈んでいく。
しんと静かになると、床一面の黒い沼は、また元の古びた石畳の姿に戻った。
ゼロファは長剣の血を拭い、静かに鞘に納める。
「さて……。いつでも僕が留守番対応できるとは限りませんし、そろそろご主人様へお声がけに行くとしましょうか」
偶然なのかわざとなのか、どうやらリーオレイス帝国には打撃を与えたようだからまだ良いだろう。
けれど、リュディア王国の争乱は放置してしまったし、少し世界を放置しかけている感がある。
好き勝手始めているリュディア王国の王子たち。
呪いに気付いたフェルトリア連邦の総議長。
魔女を気にしない絶対王政のシェリース王国。
この世界は、魔女が支配している。
――それを変えさせるわけにはいかない――。
続