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出国

教会を後にしたギン達4人は長距離移動の為に馬車を使用するため、貸馬車業の斡旋所まで徒歩で向かっていた。


 そんな中最初にルルーが口を開く。


「あ、そうだ。実は私、出国って生まれて初めてなの。ずっと国内で活動をしていたから」


 ルルーの発言を受けてブライアンも言葉を発する。


「俺もだ。異国ってあまり想像がつかねえぜ」


 ブライアンとルルーの発言を受けてギンが言葉を返す。


「ミッツ教徒のルルーはともかく、兵士だったブライアンは遠征とかはしなかったのか?」

「まあ、俺は町の防衛部隊に配属されていたからな。それにこの国はわざわざ他国を侵略したりしねえんだよ。ブロッス帝国みたいにな」


 ブライアンの発言を聞いてエイムが反応を示す。


「ブロッス帝国?」


 エイムがブロッス帝国という言葉を聞きなれない反応をした為、ルルーが尋ねる。


「エイムはあまり他国のことを知らないの?」

「はい、私はコッポの魔術師の村で育ってタグの町には買い物でたまに行くぐらいで他国のことには詳しくないんです」

「そうなのね、ブロッス帝国って言うのは10年程前に前身のボース王国でね反乱が起こったの。反乱を成功させてその中心人物だった将軍のギガスという男がそのまま皇帝の座に就いて今も他国への侵略は続いているわ」

「そうなんですね、でもなんで侵略が続いているんですか?」


 エイムとルルーがブロッス帝国について会話をしている中、ブライアンが話に参加し自分の知る限りの情報を話す。


「俺が聞いた話だとどうもその皇帝のギガスはとんでもねえ野心家で領地の拡大をしているっていう話だ。世界中をブロッスの旗で埋めるっていう誇大妄想を抱いているんじゃねえかっていう噂も聞くな」


 ブライアンの説明が終わるとギンが反論を述べる。


「あながちそうとも言い切れないな」

「どういうことだギン、まさか侵略している奴の肩を持つのか?」

「そうではない、ブロッスの軍事力は強大だからな皇帝の野望も誇大妄想とは言い切れないな」

「確かにな、そう言えば2、3年前位にルワール王国を……」


 ブライアンが話を続けようとしたところをギンが話を強制的に終わらす。


「さ、今の俺達にブロッスは関係ない。早く貸馬車に行くぞ」


 ギンがそう言って少し早歩きをするとブライアンは少し納得のいかない表情でついて行き、エイムとルルーも戸惑いながらついて行く。


 貸馬車の斡旋所に着いたギン達は係の者に馬車の手配を依頼し、目的地を告げ代金を前払いで支払い、指定された場所で馬車を待つこととした。


 馬車が到着すると4人は馬車に乗り込む。馬車が移動すると程なくして国境付近に辿り着き、出入国手続きと通行料の支払いを行い、出入国を終えるとブライアンとルルーが気の抜けたように言葉を放つ。


「はーっ、出国って思ったよりあっさり済むんだな。拍子抜けしたな」

「私もよ。でも私は入国の方が緊張したわ」


 2人の言葉を聞いたエイムが控えめに笑い出す。


「フフフッ」


 驚いた2人は思わずエイムに尋ねてしまう。


「エイム⁉どうしたの?」

「今、俺達なんかおかしいこといったか?」


 2人に尋ねられたエイムが返答する。


「ごめんなさい、お2人とも私が入国した時と似たようなことをおっしゃたので少しおかしくなって」


 まさか自分たちの言い方で笑うことに不意を突かれた2人は戸惑いながらもエイムに対し思いを話す。


「そうなのか、でもエイムが笑ったとこ初めて見たな」

「そうね、ずっとすごい形相で色々言ってくるんだもん」


 2人に思わぬ言葉を掛けられたエイムは戸惑いながらもどこかうれしそうであった。


「そうでしたっけ?あ、でもルルーさん、私そんな怖い顔してました?」


 ブライアン達と楽しく談笑するエイムをギンは表情こそ変わらないがどこか優し気に見守っていた。

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