魔物の襲撃にあい、被害の出た村に訪れたギン達は魔物が残した可能性のあるものを発見するために村中を捜索することとした。
組み分けを終え、ルルーが一同に呼びかける。
「じゃあみんな、お願いね。なにか見つけたらとりあえず村長さんの家に行って。それで1人は村長さんの家で待って、もう1人は他の組を呼んで」
ルルーの声を聞いて、それぞれの組は動き出し、ミッツ教徒と傭兵団も村人への支援物資の配布準備をする。
「それでは、みなさんよろしくお願いします。何か分からないことがあれば私に聞いてください」
「任せとけって」
教徒と傭兵達が配布準備を始めたころにギン達もそれぞれの組が捜索を始めた。
ヨナと傭兵が何やら話をしている。
「姉御、魔物の肉体の一部を見つけりゃいいんですよね?」
「エイムはそれで魔力感知ができるって言ってたけどね」
「一部を渡して他は俺達でこっそりくすねて後でどっかに売りさばくってのはどうですか?」
「あんたね、何考えてんだい!」
ヨナが血相をかえて怒ったため、傭兵は思わずなだめてしまう。
「じょ、冗談じゃ、ないですか。そこまで怒らなくても」
「笑えない冗談はやめな」
「だけど姉御、前はそういうのを姉御も進んでやってたじゃねえですかい」
「前と今じゃいろいろ違うんだよ。あの時はあたしもただ生きるのに必死だった、だけど……」
ヨナが少し間を置いたため、傭兵が尋ねる。
「だけど、なんですかい?」
「あいつらの言葉に心が動いたのは事実だよ。だけど半信半疑な部分もあった。でも、この間の帝国との戦いでギンから覚悟みたいなものを感じたよ。あいつは本当に帝国に勝って戦争を終わらせたいんだなって」
「姉御、俺もあいつは信じられますぜ。俺達を使い捨てじゃなく仲間と思ってくれているようですから」
「あいつだけじゃないよ。みんな本気でそう思っているし、だからあたしらがあいつらの信頼に恥じるようなことはしちゃダメなのさ」
ヨナはギン達との出会い、そして帝国との戦いを目の当たりにし、ギン達に対する信頼感が増しており、自分達も彼らの信頼に応えたい。そう考えるようになっていたのだ。
ヨナ達が話している頃、ブライアンとジエイも捜索をしていた。
「なあ、ジエイ、なんかこう、魔物のものが分かる忍術とかねえのか?」
「ブライアン殿、忍術はそれほど万能ではありません。私が使用できるのは速度の強化と4属性の術だけですから」
「いや、それでも充分にすげえじゃねえか!謙遜しすぎるとかえって嫌味だぞ」
「むう、申し訳ない。ですが我が先祖より代々伝わる秘伝の技ではあるのですが私はまだ未熟ですので」
ブライアンはジエイの未熟という言葉を聞いて驚愕し、先祖のことを尋ねる。
「じゃあ、お前のご先祖様っていうのはどんだけすごかったんだ?」
「我が家に伝わっている伝承ですと4属性の術の混合術というものが使えたそうです。本来反発してしまう属性すらもまとめてしまう力は今の私にはありません」
「じゃあ、お前もそんな力を秘めてるかも知れねえのか」
「修行次第でしょうな」
先祖に追いつかんとするジエイの姿勢にブライアンは感心し、ジエイに対しある種の敬意が生まれていた。
「ジエイ、俺はお前みたいな術は使えねえが足手まといにはなるつもりはないぜ」
「何をおっしゃいますか、あなたの怪力は私では到底追いつけませんよ。謙遜も過ぎると嫌味ですよ」
「はっはっはっ、一本取られちまったぜ」
ジエイが冗談を返してくるとは思わず、ブライアンはただ笑うしかなかった。