ギン達がエイムを連れ去り逃走したブロッス帝国の軍の追跡を開始した頃、追跡対象となっている、アビィ率いる魔導師団とプラナが指揮する魔導騎士団の面々は逃走の為にばらけたグループが順次本陣へと帰還していた。
最も早く帰還していたアビィはエイムの身柄を拘束していたプラナの帰還を待っており、部下に尋ねる。
「まだか、あの娘は?」
「はっ!帰還報告はまだありません!」
「まさか敵に逆に捕縛されたのではないだろうな!そんな目にあっておれば許さぬぞ」
アビィは中々帰還しないプラナに対し苛立ちを隠せないようである。
そんな時に別の部下より報告が入る。
「アビィ様!プラナ卿が帰還されました。例の娘も一緒です!」
「当然だ!あやつだけの帰還など許されるはずはない。ここに連れてくるよう申してこい!」
「はっ!」
アビィの指示で部下はプラナに対しエイムを連れてくることを伝えに行った。
部下が伝えに行ってしばらくするとプラナがエイムを連れてアビィの元へ現れ、第一声を放つ。
「ただいま帰還いたしました。例の娘はこちらです」
エイムを前にしたアビィは自身の部下、そしてプラナ達に指示を出す。
「ご苦労であった、私はこの娘と少しばかり話がある。お前達は本陣の撤収準備を始めろ。プラナ卿、貴君らには周囲の警戒を任せる」
「はっ!早速準備をして参ります」
「お任せを」
アビィの部下、そしてプラナは指示に対し返答し、それぞれの役割を果たしに向かう。
プラナと周囲の警戒をしている騎士の1人はプラナに対し言葉を放つ。
「プラナ様、やはりあの魔術師は我らの事を部下と勘違いしておりませぬか、不名誉な人さらいをさせたうえ、我らを小間使いのように扱うなど」
「お前の気持ちは分かる。だがこれも帝国の為なのだ」
「娘1人を連れ去ることがですか?」
「そこは我らが考えるべきところではない、我らは与えられし任務を全うするのみだ」
プラナも内心は先任者、つまり自身より早くブロッス帝国軍に入隊していたとはいえ、同格のアビィに部下のように扱われることや騎士道を重んじる自分達が人さらいなどをやっていることに内心憤りを感じてはいるが、皇帝の命令であることと、自身が魔導師団といさかいを起こせば上官であるカイスが責任を問われかねないことを恐れ、屈辱にも耐えているのだ。
そんなプラナの内心を知る由もないアビィはエイムに対し話しかけていた。
「お前がエイムか、単刀直入に言う、我々に協力してもらう」
「お断りします。いきなり私を捕まえてそんなことを言うのは失礼じゃありませんか」
エイムの一言に対し、アビィは鼻で笑った。
「ふっ」
「な、何がおかしいんですか?」
「今お前の魔力の波動を探って確信を得た。お前はかつてボース国に仕えていたフィズという魔術師の子だ」
「えっ⁉」
エイムにとって衝撃の事実がいま明かされた。