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SS―15.やっぱり気持ちいいは正義なの?

先輩とのデートは幕を閉じた。


二人手を繋いで帰宅した後、私はルルさんを訪ねていた。


「ルルさん?ミリーです。……入ってもいいですか?」

「……ミリーさん?いいですよ、どうぞ」


ドアを開け私はルルさんの部屋に入った。

可愛らしいさわやかな柑橘系の香りがする部屋。


いろいろな装飾に囲まれた少女らしい部屋だ。


「おかえりなさい、ミリーさん。……シュラド様とのデート、どうでした?」

「う、うん。……嬉しかったです。……でも、沢山泣いちゃいました」

「っ!?…ミリーさん……」


そしてそっとベッドに腰掛けていたルルに抱き着く。

僅かに肩が震えてしまう。


「先輩……優しすぎですよね」

「っ!?……はい。私もそう思う……シュラド様、あの人おかしいです」


二人目を合わせ思わず吹き出す。


「私いっぱい優しくされて、大切にされて……そして振られちゃいました」

「振られ?!……ど、どういう?」

「あ、ごめんなさい。えっとね、前の、日本でのことを想って私改めて告白したの。もちろん何も変わらないし、今だって先輩の事大好き。……でも以前の私は悔しかった。舞奈さんに勝てない自分が嫌いだった」

「……」

「先輩、本当に誠実でカッコよくて優しい人。……ちゃんと私を振ってくれたの」

「…ミリーさん」


思わず零れ落ちる涙。

気付けばルルが優しくそれをぬぐう。

そして小柄な彼女が私を抱きしめた。


「よしよし、辛かったね……そして、偉かったね……私ミリーさん、尊敬しちゃいます」

「うあ、え、えっと……ぐすっ……ヒック……うあ…あああ……うあああああああああ…」


ルルの優しさに涙腺が崩壊した。

暫く優しく髪を撫でられ、安心しきりルルの胸に顔をうずめる。


ちょうどベッドに押し倒すような格好になってしまっていて、思わず顔を赤らめる。


「あ、ご、ごめんなさい……ひゃん♡」

「……はあ♡……ミリーさん……おっきい♡」


気付けば背筋に怪しい気配がかけ抜ける。

ルルの可愛らしい手が私の胸をそっと触っていた。


「……ミリーさん?こっち見て?」


問われ顔を上げる。

そしていきなり唇を奪われた。


「っ!?ンんん♡……んあ♡」

「はあ♡はあ♡……んふふ♡……可愛い♡」


そしてあっという間に体勢を入れ替えられ、ベッドに押し倒される私。

ルルの目が怪しく光る。


「ミリーさん?悲しい時は運動に限りますよ?」

「う、運動??」

「ええ。とっても気持ちいい運動です♡」


そして押し寄せる快感。

ルルの可愛らしい手がまるで別の生き物のように敏感なところをピンポイントに刺激する。


思わず漏れてしまう色っぽい声。

そして突き抜ける甘美な快感。


「んあっ♡……くうん♡ルルさん、あう♡ルル♡」

「かわいい……ミリーさん……ほら♡力抜いて♡」


狂乱の宴は深夜まで続いた………



※※※※※



翌朝。


何故か艶っつやになった絵美里とルルは二人仲良く私を訪ね部屋へと来ていた。

今私と俊則、ちょっと色々と打ち合わせをしていたのよね。


「おはよう、ルル、絵美里。……あなたたちどうしたの?なんかやけに色っぽいけど?」

「あ、あはは、な、何でもないですよ?舞奈さん」

「あはは、や、やだなあ、ロナリアお姉さま」


ん?

なんか怪しい?


「おはよう、二人とも。…絵美里、昨日はありがとう。とっても嬉しかったよ」

「は、はい。先輩。……私も、素敵でした♡」


そして甘いオーラに包まれる俊則と絵美里。

思わず私はジト目を向けてしまう。


「むう。……はあ、まあしょうがないか。……絵美里、俊則とのデート、楽しかったの?」

「ええ。また行きたいです♡」

「ふーん。……ねえ俊則?次は私だよ?覚悟してね」

「覚悟って……うん。とっても楽しみにしてるよ?…もう決めたの?」

「うん。……あ、あとで、その…二人きりの時に……ね?」

「う、うん」


うあ、恥ずかしい。

なんか色々意識しちゃって……


だってルルと絵美里、デートした後……とっても可愛いんだもん。

ちょっと心配なくらいに。


「それでどうしたの二人とも。何か用でもあったの?」

「はっ、そうでした。ロナリアお姉さま、そろそろですよね!」

「……ん?そろそろ?」


私の返事に何故か頬を膨らませるルル。

可愛い♡


「むうっ、運動です。4人での運動っ!!……今日いいですよねっ!!」

「ひうっ?!」


4人での運動……

いわゆる全員で行う『アレ』だ。


思わず情景が浮かび顔を染めてしまう私。

隣の俊則は既に体温が上がっているかのごとく真っ赤になりふらついている?


「え、えっと……ルル?そ、その……本当に?こ、今夜?」

「もう。私もう我慢できないです。あれからシュラド様……私に触れてくれませんし……私の事、飽きちゃったんですか?」


あざとくシナを作り上目遣いをするルル。

俊則は当然ながら撃沈されていた。


はあ。

うん。

まあしょうがないかな。


確かにここの所デート騒ぎで私たちは直接の触れ合いは御無沙汰だった。

言っても数日だけどね?


正直恥ずかしいけど。

実は私もちょっと期待していたのは事実だ。


「ふう。分かりました。……夜で良いよね?まさか今からとか言わないわよね」

「……ロナリアお姉さま?……い、今からしませんか?」

「っ!?えっ?で、でも…ま、まだ朝だよ?…た、確かに今日は特に用事はないけど…あっ、でも俊則は訓練するのよね?」

「う、うん。このあと10時からだね。騎士団の皆にもお願いしてあるし」


俊則はこの世界を守るために努力している。

流石にそれは最優先させたい。


「ねえルル。やっぱり夜にしよう?それにさ、どうせそういうことするのなら相談しない?」

「相談?ですか?」

「うん。だって今はもう皆俊則の事大好きでしょ?だから…」


何故か舞奈はルルと絵美里だけを呼び、こそこそと話し始めた。


「っ!?」

「うあ♡…ほ、ほんとですか?ロナリアお姉さま」


ん?

何かルルと絵美里吃驚してるけど?

なんだろ?


あっ、こんな時間。

一応騎士団の皆さんとの訓練の前に自主練しておきたいんだよね。


「舞奈?」

「う、うん?」


何故か動揺している?!

問い詰めない方が良いよね?


「…えっと。……俺、騎士団の皆さんとの訓練の前に自主練したいから。ちょっと訓練場に行くけど」

「う、うん。頑張ってね」

「うん。じゃあ」


俊則はなんか不穏な気配を感じたらしいけど。

部屋を出ていったのを確認し、私たち3人は大きく息をついた。


「あの…ロナリアお姉さま?さっき言った事…本気ですか?」

「そ、そうですよ舞奈さん。ちょ。ちょっとそれ…は、恥ずかしくないですか?」


うん。正直私も恥ずかしい。

でも。

きっと俊則、すっごく喜んでくれると思う。


だって彼…

日本にいた時、あまり幸せじゃなかったんだ。

だから恥ずかしいけど……


どうせ『そういういうこと』をするのなら、思いっきり喜んで欲しい。

私は創造のスキルで、禁断の物を作り出した。



※※※※※



騎士団との訓練を順調に終え、今俺は汗を流すためにシャワーを浴びに行くところだ。


「シュラド様?訓練は終えたのですか?」

「あっ、はい。……ずいぶん荷物多いですね。手伝いますよ?」

「ええっ?そ、そんな…」


メイドの一人メイリンさんが、大きな鍋を運んでいた。

しかも鍋の中にはいろいろな食器。

女性一人ではかなり重い荷物だ。


俺はそれをひょいっと持ち上げる。


「うわあ、凄い…はっ?!シュ、シュラド様?そんなにたくさん…」

「大丈夫です。俺これでも鍛えてますから。厨房で良いんですよね」

「うあ、え、えっと……はい。ありがとうございます」

「いえいえ。いつも色々皆さんにはご迷惑をかけています。たまには手伝わせてください」


俊則はいつも思っていた。

自分には使命がある。

でも他のことについてはみんなに助けられっぱなしだった。


それに手伝おうとするといつも舞奈が、


「俊則?皆にはそれぞれ役目があるの。だからあなたは気にしないで」


とか言って俺を気遣ってくれるんだ。


でもさ。

たまにはいいじゃんね。



※※※※※



「ふうー。さっぱりした」


メイドさんの荷物を運び、なんだかすごく恐縮された。

舞奈の言った事、少しわかってしまう。


(強くなりたい…)


バスタオルで頭を拭きながら、ふいに思う。

俺は何だか分からないけど、今勇者としてこの世界にいる。

もちろん弱いよりは強い方が出来ることは多くなる。

だけど…


思わず天を見上げてしまう。


相変わらずこの世界では人の命は軽い。

舞奈はゲームだからどうしてもそう言う事があるって言っていたけど…


傲慢かもしれないけど俺は思ってしまう。

手の届く範囲。

それだけは絶対に守ると。


愛する舞奈。

それにルルと絵美里。


思い浮かべる彼女たちの笑顔……


そう、俺は今きっと誰よりも幸せだ。


なんだか昨日絵美里とデートをしたせいか、日本にいたころの弱い俺の心が表面に出ている気がして……


シャワー室を出て自室に向かいながらため息をついてしまった。


「ははっ。なんだよ。……俺。……情けない俺もまだ居たんだ」


逆に気づいて笑みが出てしまう。

そうだよ。

俺は俺。


色々奇跡みたいなことが起こり過ぎて、なんだか夢を見ているみたいな自分。

でも違う。


俺は前を向いていた。


「…舞奈の顔……見たいな」


そう呟いて、でも俺は自室へと向かったんだ。


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