「うわー、凄い!! 悠真は毎日こんな景色見てんの!!」
我が家のリビングに入ってきた彩奈が声を上げた。
今日は、校外学習を週明けに控えた懇親会ということで、同じグループになったメンバーが我が家に集まっている。まあ、懇親会という名前こそ付いてはいるが、私の家を見てみたかったというのが本当のところだろう。ちなみに、仁は部活があるため、遅れて来るようだ。
「おおー! 見てみ、眞白! イオンのショッピングモールまで見えるぞ。ほんと、凄え眺めだな」
春人が遠くを指差し、眞白に言った。最近、この二人が仲良くしているのを見ると、嫉妬に近い感情が湧き上がってくる。ただその嫉妬は、眞白に対してなのか、春人に対してなのかが自分でもよく分からない。
***
「ごめんごめん! 遅くなっちゃって!」
部活を終えた仁がやってきた。窓の外の風景は、日が落ちて夜景へと変わるタイミングだ。春人たちはタワーマンションからの景色に飽きたのか、ソファでくつろいでいる。
「お疲れさま、仁」
「ありがと。ってか、めっちゃ凄い景色じゃん! ベランダに出てみてもいいか、悠真」
私は「もちろん」と言って、仁と一緒にベランダに出た。
「いやあ……ホント凄い景色だな。こんなとこに住んでんのか、悠真は……あ、そうそう。ちょうど悠真に話があるんだよ」
そう言った仁は、リビングの方を振り返る。皆がソファから動かない様子を見て、改めて仁が口を開いた。
「今度の校外学習さ、途中から男女一人ずつのペアになれないかなって思ってるんだ。悠真も協力してくれないかなと思って」
「も、もちろん大丈夫だけど。この話は春人も知ってるのか?」
「ああ、春人も知ってる。でさ、ペア決めをする時、悠真がジャンケンで勝ったらさ……明日香を選んで欲しいんだ」
私が明日香を選ぶ……? これは誰が誰とペアになりたいってこと……?
「それは、春人が眞白とペアになりたいってこと?」
「あ、ああ……それもある。それもあるけど……」
「じゃ、じゃあ……仁がジャンケンで勝ったら……?」
仁は目を逸らして「言わせんなよ、彩奈だ」と小声で言った
これは、全くの意外だった……三人の中じゃ、仁は明日香がタイプだと思っていたからだ。っていうか、ジャンケンで何を出すのか、最初から決めておいたほうが良いのではないだろうか。
「実は俺、ずっと前から彩奈のことが好きだったんだよ。でも、いつの間にか彩奈は広樹って奴と付き合い始めててさ。その時、凄く後悔したんだ俺。なんで告白しておかなかったんだろうって」
「なるほど……今はフリーらしいもんな、彩奈」
「そうなんだ。正直さ、彩奈が悠真に熱を上げているってのは気づいてる。でも、今度は後悔したくない——って、既に彩奈に告白されてるとかないよな!?」
「だっ、大丈夫。そこは安心してくれ」
「ちょっとー!! 二人でなにコソコソ話してんのよ! みんなでリビングで話そーよ!」
彩奈がベランダに出てきたことで、この話は終わった。それにしても、仁が彩奈のことを好きだったとは、意外も意外だった。