「悠真!」
別行動をしてから20分が過ぎた頃、彩奈が私の元へと駆けてきた。何かあったのだろうか。
「ちょ、ちょっとだけでいいから、悠真と二人になれる?」
彩奈がそう言うと、明日香は気を利かせたのか「オッケー」と言ってその場を離れた。
今いる場所は、美術館のバルコニー。燦々と太陽の光が降り注ぐ中、彩奈は私を見つめて言った。
「さ……さっきね、仁に告白されたの」
「そ、そうか……それで?」
「断っちゃった……私は……私は、悠真が好きだからって。でね……仁に言っちゃったんだから、悠真にも直接言っちゃわないとって。——な、なんか、乱暴な告白になっちゃって恥ずかしいけど」
頬を紅潮させた彩奈は、そう言うと下を向いてしまった。
生まれて初めての告白にどう応えるか迷っていたその時、背中に『ドンッ』と何かが当たった。
「ひっ広樹!? なっ、何したのっ!?」
彩奈が大声で叫んだ。
広樹……? 彩奈の元彼……?
背中に当たった場所が熱い……手を伸ばすと、生暖かい液体が手に触れた。
「キャーーーー!!」
彩奈や周りの生徒たちが悲鳴をあげる。生暖かい液体が、私の体内から止めどなく溢れ出てくる。
血だ……
背中を刺された事実に気づくと、たちまち激痛が襲ってきた。痛みに耐えられず、その場に膝から崩れ落ちる。
「悠真っ! 悠真ーーーっ!!」
私を抱きかかえ、彩奈が泣き叫ぶ。
「ま……眞白……眞白と話がしたい……」
刺されるなんて初めての経験なのに、遠のく意識の中でわかった。
私はもう、助からないと。
「眞白ーーーっ!! 眞白どこーーーっ!!」
彩奈が張り裂けんばかりの大声を上げる。明日香も……仁も大声で眞白を呼んでくれている。
でもだめだ、もう限界かもしれない……
「おっ、おいっ!! 聞こえるかっ!?」
眞白の声だ……一瞬、意識が飛んでいたのかもしれない。眞白は私の耳元に口を当てて、叫んでいた。
「わ、私はもう駄目……お、お母さんをお願い……」
「気をしっかり持て!! 会った時のように、僕に命をあずけると願え!!」
「ど……どういうこと……? そんなことしたら……」
「早くしろっ!! 生きたいだろっ!? まだ生きたいんだろ、眞白っ!!」
「うん……生きたい、まだ生きたいよ……」
誰かに温かく包まれたような感触を覚えながら、再び私の意識は落ちていった。