何とかかんとか、てんやわんや色々ありつつも、そこそこしっかり生きてきた人類は、ある時、突然大きな進化を迎えた。
言葉を喋らずとも、自分の思っていることが相手に伝わるようになったのだ。
ちょっと意識を向けるだけで、すぐに相手とコミュニケーションを取ることが出来る。
中々に劇的な進化だった。
相手の考えていることが分かるようになると、不便になることもあるかもしれないが、本音を理解し合えるので悪いことばかりではない。しかも誰か一人ではなく、皆が皆、条件はイーブン。未来は明るいと考える人も多かった。
さて、この能力を人類が手に入れ、その後、どうなったか。
簡単だった。相手に嘘を伝える能力が発達した。本音を伝えずオブラートに包んで伝える能力や、本心を相手に伝わらないように防御する能力も同時に発達した。
結局、進化を迎える前とそんなに変わらなかった。
どこまでもずるく、どこまでも卑怯、どこまでも臆病で、どこまでも馬鹿。
でも、私は神として、そんな人類がどうにも嫌いになれない。
【テレパシー】