審判員兼進行係の中盆、サイを振るツボ振り、そしてそれを取り囲む大勢の客。
緊迫感のみの空間。全員、頭がヒリついていた。
勝負の場が整った。中盆がツボ振りに指示を出す。
「ハイ、ツボ!」
中盆の指示に合わせ、ツボ振りはツボにサイを入れて伏せる。
「ハッタ、ハッタ!」
それを合図に、客たちが一斉に丁半を賭け出す。
丁方、半方、同じくらいの賭け額となった頃、中盆が締め切る。
「コマが揃いました、皆の衆、よござんすね…よござんすね…」
中盆が声を張る。「勝負!!」
ツボ振りがツボを開く。中を確認する中盆。
ツボから出てくる一枚のトランプカード。
「スペードの7!」
おおー、という客たちの驚きの声。
だって、最初にツボが空なの見せてもらったし、サイを入れたはずなのに、出てきたのはトランプなんだもん。
しかもサイが出てきていない!消えたんだ!すんげぇ!
純粋な拍手が賭場に響き渡る。温かな空間。
【ツボ振り】