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青龍45

その一帯は、構成する五つの国の頭文字を取って「パピプペポ・カントリーズ」と呼ばれていた。


パパパパ国。ここは「パリパリの実」というの取れる。この実は味もさることながら、パリパリと口の中で割れる食感が絶妙。パリパリとしながらも、やがて優しく口の中でほどけていく――そんな不思議な食感。これを味わうため、世界中から観光客が訪れるとか。


ピピピピ国。ここは「ピリピリの実」が名産。この実は主に香辛料として用いられることが多い。縁の下の力持ちと思われそうだが、この実を入れるのと入れないのでは味の深みが全く違う。世界中のシェフ、料理人がこの実を欲しているにも関わらず、数年先まで予約が取れないという。


ププププ国。ここの「プリプリの実」のモチモチとしたその食感は、デザートとして一級品の価値を誇る。仄かな甘みもあり、ふんわり甘い匂いが香るその食体験は一度は経験しておくべきだ。パティシエ垂涎の実なのだが、残念なことにどれだけ技術を凝らしてもその実そのままの味には中々勝てないため、逆に禁断の果実となってしまった模様。


ペペペペ国。ここの「ペリペリの実」は、味ももちろん素晴らしいのだが、特徴とすべきはその腹持ちのよさだ。一つの実からペリペリと剥がれるその薄皮を食べるだけで、十分にお腹が膨れ、満足感を得られる。たくさん取れるので、世界の食料危機を救う重要な実となるかもしれないと期待されている。


ポポポポ国。ここの、赤ワインと牛骨を幾日もかけて煮込んだ、琥珀色に艶めくそのデミグラスソースを特徴とする林さんのハヤシライスは絶品である。口に運べば、まるで絹のように滑らかなソースが、舌の上で静かにほどけていく。その奥から現れるのは、時間を惜しまず煮込まれた和牛の芳醇なる旨み。繊維がほろりとほどけ、肉の甘さと酸味、そしてコクが一体となって押し寄せる。まさに神話と呼ぶべきその瞬間。あなたのハヤシライス感はもはや今までのハヤシライスではいられない。


つまり、どんな国にも、何かしら誇れるものがあるのである。

お互いの国を尊重し、暮らしていけると良いですよね。


【名産】

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