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青龍47

勇者、武闘家、僧侶、魔法使いの4人組は、伝説のアイテム「ミラルダの鏡」を求め、「ローテンベルクの泉」へとやって来た。


ここの泉には女神ミラルダがいる。

泉に向かって、ホーリーリーフ、白銀のローブ、プラチナブレスレットを投げ入れることで、女神が現れ、ミラルダの鏡と交換してくれるという伝説だった。


泉前へ到着した御一行。早速アイテムを投げ入れる。


すると泉にさざなみが立ち、霧とともに女神ミラルダが姿を現した。


「我が鏡を欲するものたちよ。幾多の宝珠を泉へと送ったのはあなた方ですか?」


女神が告げる。はい、と声を上げる勇者。


「その覚悟、受け取りました」女神が微笑む。「ならば、これから出す、私の問いに答えてください」。


物々しい雰囲気の中、女神がゆっくりと問いを読み上げる。


「或る商人、物を仕入れるに、個数は金額の平方と等し。 その物を一文高く売れば、ちょうど百文の利を得るといふ。 問ふ――この時の仕入数、いかほどなるや」


うっ…!と誰かのうめき声が泉の周囲に鳴り響く。


しかし、間髪入れずに答える者一名。


「仕入れの値を十文と見なせば、品の数は百個なり。これを一文高く売れば、一個につき一文の利得、百個で百文なり。問題の趣旨に違ふところなし。ゆえに、仕入れたる数は百個と知るべし。」


女神が微笑み、ゆっくりと透明になったかと思うとそのまま消えていった。


泉のそばには鏡が置いてある。


回答者は、勇者でも僧侶でも魔法使いでもなく武闘家であった。


三人が、何とも言えない感情で武闘家を見つめる。

奇妙な沈黙の時間。


見られていることに気付いた武闘家が口を開く。


「好きなんだよ、関孝和の『発微算法』」


【和算の女神】

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