エリアスの背後で、レオナードの指がゆっくりと滑る。
背中に伸びる銀髪をすくい上げ、湯をかけながら、首筋から肩へと丁寧に撫でるように洗われていく。
(……いや、普通に洗うだけなら侍女でもできるのでは……自分でするけど……)
そんな疑問が頭をよぎるが、言葉にはならない。
この状況において「出ていってください」と言える雰囲気ではない。
「……お前、痩せたな」
レオナードの低い声が耳元に落ちる。
エリアスは背をすくめるようにして、なんとか平静を保とうとした。
「そ、そうですか? 体調を崩していたので、仕方ないかと……」
「いや、そういう意味じゃない」
レオナードの手が肩から鎖骨のあたりへと移動する。
指先が軽く撫でるように動くたび、エリアスの肌が敏感に反応してしまうのが自分でもわかる。
(……何なんだ、これ……いつもより……)
レオナードの手は確かに優しい。
けれど、そこにあるのは単なる気遣いではないことも、エリアスにはわかってしまう。
「エリアス」
「……何ですか」
「もっと力を抜け」
そう言いながら、レオナードはさらにエリアスの体を引き寄せた。
ぴたりと背中がレオナードの肌と触れ合い、湯の中で水音が跳ねる。
そのまま、レオナードの手がエリアスの胸へと伸びてきた。
「あっ……レオ様、いいです……!自分で……っ」
しかしその制止を聞くことなどなく、指は滑り、胸元にある突起を撫でた。
「今更、だろう?エリアス」
ぴん、と指ではじかれる。
「……んっ……」
思わず声が漏れた。
エリアスのそこは乳頭が露出されておらず、密やかに息づいていた。
「ここもちゃんと洗わないとな。お前と同じ恥ずかしがり屋で隠れてしまっている」
身を捩ろうにももう一方の手で腰を抱かれるとどうしようもない。
薄い桃色の乳輪の上を指で刺激しながら、中心へと向かわせる。
そうしてから未だ肉の中に埋もれている個所を外側から指先で揉んでやると、乳頭の先っぽが顔を出し始めた。
「くっ、ん……っ」
エリアスが唇を噛み占める。
その場所は普段隠れた場所だからこそ、出てしまうと困ってしまうほど敏感だ。
触られているうちに、腹の奥が熱くなり堪らない。
いつもこうだ、とエリアスは思う。
レオナードの手によっていとも簡単に身体は火照り、レオナードを求め始める。
「エリアス……ほら、出てきたぞ」
かり、と指で搔かれると、胸先からジンと痺れるようだった。
刺激にぷっくりと乳頭が顔を出す。
レオナードは視線でそれを確かめた後、エリアスの耳にキスをしながら囁いた。
そして、その言葉の終わり、
「ひゃんっ……!」
エリアスが甘ったるい悲鳴を上げる。
レオナードが乳首をきゅっと摘まみ上げたからだ。
緩い電流のような快感が走り抜けていき、肌を震わせた。
「本当に、可愛いな……お前は」
甘イきをしてしまったエリアスの首筋を吸い上げながら、レオナードは満足したようにまた胸先を撫でた。
※
湯気が薄くなり始めた浴室で、エリアスは湯船の縁にぐったりと寄りかかっていた。
全身に熱がこもり、顔まで赤くなっているのが自分でもわかる。
その身でレオナードの全てを受け入れ、腹の中には精を出された。
それも一回ではない。エリアスが幼子のようにむずかっても続けられた。
(……無理……これは……無理だ……)
水の中とはいえ、足元に力が入らず、まともに立ち上がる気力がない。
レオナードのほうを見れば、彼はまだ余裕の表情を浮かべたまま、エリアスの身体を支えるように手を伸ばした。
「……もう少し体力をつけるべきだな」
「……病み上がりですよ、私は……」
「まあ、そうだな……しかし、だ」
レオナードはエリアスの耳元に顔を寄せて、一呼吸置き──
「私の子を産むには体力をつけてもらわねば」
そう囁いた。
エリアスの思考が一瞬止まる。
(……子……?は?え……?)
それを正しく理解するには随分と時間がかかり、理解した途端に、上気した肌がさらに赤くなった。
湯の中に落ちそうになった体を、レオナードの腕がしっかりと支える。
「だから、これからはちゃんと私が見ておく」
レオナードの方を見ると、その瞳がにっこりと弧を描いている。
焦るのは自分ばかりだ。
「立てるか?」
「無理です……もう……」
「仕方ないな」
微笑混じりに呟いたレオナードが、エリアスを抱き上げた。
水滴がしたたり落ちる中、エリアスは抵抗する気力もなく、ただされるがままに浴室を後にした。
(……こんなの、もう……色々と無理……どうにかしなければ)
レオナードの腕の中で、エリアスはそんなことを思った。