「大丈夫か?」
「わたしは大丈夫よ。それよりキヨの方こそ大丈夫なの?」
レイティアは俺の上から退きながら言う。
落ちながらも俺はレイティアの下に入りクッションになる事に成功した。
幸いに地面を滑る様に落ちたため軽い打撲と擦り傷だけで済んだようだ。
「少し休めば動けそうだ」
俺は上を見ると松明の火がおとなしく燃えている。戦闘音も止んで、ほかのみんなはどうやら問題ないようだ。
「大丈夫ですか? ご主人様」
上からソフィアが透き通り、よく通る声で問いかけてくる。。
「二人共無事だけど、ここから上に上がるのは無理だ。先に進んで上がれるところを探して見る」
俺はそう言ってバックの中からランタンを出し、火をつけてぐるぐると回し無事を知らせる。
「わかった。気をつけるんだよ。僕たちもそちらに合流出来るところを探して見る」
あちらからも光を回して返事をする。
ランタンを照らして周りを見るとあと少しで川に落ちるところだった。どのくらい深いかわからないがこんな暗闇で池に落ちたら大変だ。そういう意味ではラッキーだったんだろう。
「さあ、もう大丈夫だ。とりあえず川に沿って川上に向かおう」
俺はさっきまで持っていたクロスボウがどこかに行ってしまった為、バックの中から組み立て式の槍を出す。
レイティアも剣を抜き、有事に備える。
俺は槍をなるべく前に出し暗闇の向こうを探りながら前に進む。
川に落ちてしまうと滑って流される可能性が高い。なるべく川から離れて移動する。
しばらく歩いたが合流出来そうなところが見当たらなく、俺たちに不安が募る。
「一休みしよう」
焦っても体力は消耗するだけだ。
バックの中からパンと干し肉を出し、火を焚いて茶を淹れる。
「ねえここはドワーフの住処だったんでしょう。何で落ちない様に柵を作らなかったんでしょうね」
確かにそれまでは人が動きやすい様に通路や部屋が作られていた。
「柵を作らない理由。……外敵を落とすためか? そうすると外敵を排除する者がいる!?」
ズリズリ。
慌ててランタンにカバーをしてお湯の火は消す暇なく、俺たち二人は元来た道を慌てて戻った。
岩陰から俺たちが休んでいた所を覗き見る。
ズリズリと何かが這う音が聞こえ、何やら長く大きなものが見えた。
いくつも節のある体。無数の足。長さ五メートル以上あるムカデのようだ。
このままやり過ごせればありがたい。そう思って息をひそめている俺に、レイティアは指であそこを見てと合図した。
オオムカデの尻から蜘蛛の糸の様な物が出てその先に糸でぐるぐる巻きにされていた何かが引きづられていた。
それはなんとか糸から逃れようと動いている。
人だ!