「レン! ミストストーム! 全開だ」
アレックスの指示でレンは霧を発生させる。
ゴブリン達は視界を遮られて動きが止まる。
「リタ、レイティアは敵真ん中にファイアボムを撃ってくれ」
俺の声に二人はタイミングを合わせてファイアボムを放つ。ゴブリンの悲鳴が響く。
「ラン! エアバーストをファイアボムのところから上空に向かって撃て!」
「アレックス様、ミストストームが消えてしまいますよ」
「いいから、最大級で撃て!」
「エアバースト!」
霧は炎と上昇気流に巻き上げられて雨雲を作り出した。
アレックスはマナ石を握りしめる。
「サンダー! バースト」
雨雲は雷雲に変わり無数の雷を降り注ぐ。
細かな狙いなどない。ただ味方の近くに来ないようにだけ集中しているようだ。
空気を切り裂く雷の音と光は味方である俺たちでさえ震え上がる。
近くの木は二つに割けてゴブリンの群れに倒れ、炎をあげる。
どのくらい雷が降り注いだだろうか。
あれだけいたゴブリン達はすでに生きている者は見当たらない。逃げた者もいたようだがすでに俺たちの視界にはいない。
大軍戦用魔法兵器だ。
「貴方達、何て魔法の使い方を……」
アリシアが呆れていた。
これで落ち着いて街に帰れる。
俺たちは馬をつないでところまで行きゴブリンの巣を離れた。
完全に暗くなる前に俺たちは野営が出来るところを見つけた。
「みんなありがとう」
レイティアが今回の件をアリシアに説明するとアリシアとユリは俺たち全員にお礼を言った。
「他人の私たちのためにお金の工面から危険をかえりみずここまで来てくれて本当にありがとうございます。助かりました」
「赤の他人だ何て、義姉さん」
俺はアリシアに言った。
「義姉さんと呼ばずにアリシアと呼んでください。キヨトさん」
心のロックウォールが発動したようだ。
「まあまあ、アーちゃん。キヨさんもいい人そうじゃない。そんなに邪険にしなくても」
相変わらずパンをほおばりながらフォローしてくれた。
「ユリ、あなただってリリスが突然男連れて来て恋人です、って言ったらどうするの?」
「リーちゃんが? ありえないよ。そもそもあの子に恋愛感情ってものがまだないもの」
ん? リー? ユリ?
「ご主人様……」
ソフィアも気がついたようだ。
俺はバックに入れっぱなしだったリーの手紙を引っ張り出す。
宛先はユリ。
「ユリさん、もしかして住所この辺りですか?」
俺はリーから住所を書いてもらった紙を見せた。
「え、なんで知ってるの? そうよ。これは?」
「リーから預かった手紙なのですが、リーってリリス? 女なんですか?」
手紙を渡して聞いた。
「会ったの? 何言ってるのリーちゃんは女の子よ。可愛かったでしょ。まさかアーちゃんの妹だけでなく、私の可愛い妹にまで手を出してないでしょうね」
さっきまでのほんわかした雰囲気から一転険しい顔になる。
「どういうこと? キヨトさん?」
ダブルお姉ちゃんが俺に詰め寄る!
「ちょっと説明を聞いてください」
さっきの雷より災害だ。