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第2話 「16歳の誕生日は悲劇の始まり」

「かみ~~!!誕生日おめでとう!!」


「はい、アタシらからの誕プレ!」


「わあぁ~~、ありがとう!!。しかもコレ、直ぐに売り切れちゃう「焼肉グミ・カルビ味」じゃんっっっ!!」


「あんたそのグミ食べたがってたもんねぇ~」


「開店前に並んだ甲斐があったね」


「あーりん、ゆわっち……本当にありがとう!!」


放課後の教室で、親友である2人を抱き締めた。そう────今日はあたしの、16歳の誕生日だ。


今日は家に帰ったら誕生日パーティー。

楽しみな筈なのに……なんだか気が乗らない。

夕日に照らされる帰り道───神美かみはバッグに入っていた菓子パンを食べながら物思いにふける


「…神美かみ、また太った?」


「え、バレた?」


「えへへ……って可愛くポーズしてもダメだから。プレゼントにグミ…その他諸々あげといてなんだけどさ……、あんた…痩せた方が良いよ。」


「ええええ!?なんでーーー!!」


「ただ単にあんたの身体が心配だからよ……。まだゆるキャラのようなコロコロボディだから許されるけど……───それ以上太ったら、本当に豚になるわよ!?」


「豚?……豚カツの話?」


「ダメだわこの子──全然伝わってないっす」


「単刀直入に聞くけど、彼氏とか欲しくないわけ!?」


「ほ、欲しいよ!!そりゃあ…あたしだってさ……美味しいクレープや、パフェや、アイスクリーム……ハンバーガーを競い合って一緒に食べる男の子が欲しいよ!!!!」


「もうそれ、ただのフードファイターだから。」


呆れる親友2人を一瞥して、神美かみは足を止めた。2人の影が少し遠のいた


「…あーりん、ゆわっち……ありがとね、あたしの身体を心配してくれて……───」


「…神美かみが美味しそうに食べる姿は、見ててこっちも幸せになれるけどさ、でも……たまに感じるのよ……、神美かみが"食べる"行為って、義務みたいな感じってゆーの?。」


「無理矢理そうさせられてるって感じがするんだよね……」


「あはは、そんな事ないよ~───……あたしが好きで食べてるのっ。でも……そうだよね…───ダイエット……考えてみようかなぁ……」


神美かみ……っアタシ、走るのとか付き合うからね!?」


「アタシもアタシもーー!!」


「2人とも……、本当にありがとう!」


そのは前から何となく感じてはいた


幼き頃、ご飯を食べる時の母との会話は違和感でしかなかったのだ。


《|神美《かみ》、残さず食べなさい。まだ貴女は食べなきゃいけないの》


《お母さん…、あたしもうお腹いっぱいだよ!?》


《駄目よ……もっと、食べて…もっと肥えなきゃ……───そんなんじゃ"|美豚《びとん》"になれないわ……》


《あたし、某有名ブランドなんか目指してないよ!?》


《────もっと太りなさい。豚のように……血色の良い……かぶりつきたくなるような───》


その時のお母さんは目が虚ろで、まるで誰かに操られているかのような……


(今思えば、美豚びとんって…なんだろ?)


「じゃ、神美かみ、Happybirthday!」


「また、明日ねっ♪今日は楽しんでっ」


「あ、うん!、2人ともありがとね!!また、明日~~っ」


手を振りながら2人を見送った後、古びた玄関の引き戸を開けると、お父さんとお母さんが満面の笑みで立っていた。


「おかえり、神美かみ


「早くいらっしゃい、皆待ってるわよ」


「あ…、た、ただいま!」


なんだか気味が悪いと思ってしまった。

どうして……お父さんとお母さんはを着ているの?


おばあちゃんが亡くなったあの日から

あたしが見ているお父さんとお母さんは"普通"ではない気がする。


2人の後ろについて、リビングへ向かうと

親戚の皆が全員揃っていた。


「わ~皆久しぶり~!!今日は本当にありがとう!」


でも、なんで……


「なんで皆も…喪服着てるの?」


神美かみの顔を凝視する親戚の中に、中華服を着た顔面に御札を付けた者達が混ざっていた。


「这个女儿是传说中的食材吗?」


「え!?、だ……誰ぇ!?あとなんていってるの!?」


「キョンシー様───美豚びとんは、本日で16年物となりました……」


「こんなにも丸く…、非常に食べ応えがありましょう……」


不気味に笑う父と母に釣られて、全員がクスクスと笑い始めた。


すると、キョンシーと呼ばれた中の1人が顎に手を当て


「杀这个女儿」


"この娘を殺せ"


神美かみの脳内で、キョンシーの言葉が勝手に翻訳されたのだ。


「え……もしかして……絶体絶命的な?」

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