目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第10話 「痩身術」


おばあちゃんが何故、あんなに呪文のように「痩せろ」と、毎日のように言っていたのか────

それは小龍シャオロンが語った。


「お前を産んだ娘は、美豚ビトンと呼ばれる一族の末裔だった。」


美豚びとんは、小龍シャオロンとおばあちゃんが何千年の時をかけて捜していた、中華伝説の食材だったと云う────

でもその伝説は、人々を不幸に招き、最後は世界が滅びると…………

龍仙女ロンシィェンニュが持っていた予言書に記されていたとか……


「その予言書は、数千年前に龍仙女ロンシィェンニュ蓬莱五山ホウライゴザンで見つけた物らしい……」


蓬莱五山ホウライゴザン!?」


「知っているのか?」


「夢で………、夢であたし……五匹の龍を見たの……。その夢に……蓬莱五山ホウライゴザンって山が出てきて……」



《…|龍仙女《ロンシィェンニュ》が……美豚ビトンを自らの手で始末すると………───そう申していた》



「……でも、夢だから……」


確信はないけど……、あの白い龍はもしかして……──────

でも、夢で言っていた事が本当だとしたら………

おばあちゃんはあたしを殺そうとしていた?


でも………おばあちゃんは



《|神美《かみ》、饅頭食うべ》



あたしにとびきりの愛を与えてくれた人────


龍仙女ロンシィェンニュは…、お前を腕の中に抱いた時────」



《|小龍《シャオロン》………──ワシは仙女失格かもしれねぇ……》


龍仙女ロンシィェンニュは涙を流しながら私にこう語ったのだ


《これが伝説の食材?………ただの人間の赤子じゃねぇか……》


「"自分が育てる……命を懸けて"と、そう言って龍仙女ロンシィェンニュはお前の世界で、お前の家族になると決めたのだ。でもそれは……我々の世界を乱す事となり、私を含めたロンは、龍仙女ロンシィェンニュが不在となった事で、世界の平和の調和が取れなくなってしまったのだ。」


「そんな……!!」


「……だからと言って、お前のせいではない。お前は呪いに巻き込まれた犠牲者に過ぎないのだ……。」


「……っ…小龍シャオロン!、あたしには何ができるの?」


神美かみ……」


「おばあちゃんは全てを知っていても……、あたしを殺そうとはしなかった。でもそれは……世界を乱す事で…、小龍シャオロン達に迷惑かけて……。だからこそ、今度はあたしが……おばあちゃんと小龍シャオロンを助ける番だよ!。」


「───……ならば、痩身術を身につけてはくれぬか?」


「痩身術?」


「ふん、要はその贅肉だらけ肉を削ぎ落とすって事よ」


ぶっきらぼうに黄龍ファンロンが言った。


「つまり、ってこと!?」


美豚ビトンを消滅させるには三つの方法がある」


一つは、美豚ビトンの根源となる源を殺す


二つは、美豚ビトンに適してない平均な重さと体型を手に入れる


三つは、その身を異性に捧げ、交尾をする


「ぶーーーーーっ!!?こ、こ、こ、こ、こ、ここここここ!!?」


神美かみに相応しい方法は、二つ目の平均な重さと体型を手に入れる事だ」


「そ、そ、そんなあ~!!?。ダイエットなんてやった事ないし……」


「そこで──柘榴シィーリオ黄龍ファンロン───お前達に一つ頼みがある。神美かみを…、私の妃として育て上げて欲しいのだ」


「あら陛下……、それは…正妃を──神美かみにするという事で解釈して宜しいのですか?」


こくりと頷く白龍パイロン神美かみは頬を紅潮させた。


「…私の傍に置いておいた方が、身の安全は保証できる。正妃になるのは表向きであり、あくまで神美かみを護る為だ。正常な体型に戻り、美豚ビトンを封印すれば、我々の関係は解消するから安心しろ」


(…なんだ…、本気じゃ…ないんだ。)



「怒!!嫌ですわ!!!。なんでわたくしがこんな大娘おおむすめに!!」


「な、何よーーーーー!!!。それに大娘おおむすめって何!?」


「あんた小娘って柄でもでもないでしょ?」


「むきぃぃぃぃ!!!やっぱりむかつくぅ~!!」


「陛下、承知致しました。神美かみを必ず……、立派な正妃に育てあげますわっ♪」


「頼んだぞ」


「え?……ちょ、ちょっと!!あたしまだダイエット賛成した訳じゃ……」


「アタシも認めた訳じゃないんだからッ!!」


「じゃあ!、見知らぬ殿方と交尾するの?&陛下に嫌われても良いの?」


「「それだけは絶対嫌っっっっっっっ!!!」」


「ふん…、あんたなんて交尾されるどころか、豚の丸焼きにされるのがオチよ」


「むっきぃぃぃ~~!!!怒」


「やれやれ、先が思いやられるわね…」



こうして─────

神美かみ美豚ビトン封印計画という名の、ダイエットが始まったのです。


「ねぇ小龍シャオロン、おばあちゃんは結局何処に行っちゃったの?」


「そうですわ…!龍仙女ロンシィェンニュ様は……」


神美かみの問いに、少し重い表情を浮かべた白龍パイロン


龍の髭ロンシュータン……」


「??……龍の髭ロンシュータン?」


「その指輪の事だ」


「おばあちゃんがくれた……指輪?」


「時が来たら、その指輪が神美かみ龍仙女ロンシィェンニュのもとへいざなうだろう……」


「じゃ、じゃあ……!!…おばあちゃんは無事なのね!?」


「案ずるな───大丈夫だ……」



そう…………


大丈夫だ……



龍仙女ロンシィェンニュ…………


そなたは……


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?